"昭和46年、優勝した妻に夫が告げた「帰るな」" 第14話
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末、子は賞の残りを数えた。教の初期費用、参加者のて替え分、案内状の代。万円あった封筒には、もうわずかなしか残っていなかった。自分ので使えばの灯油代や娘の教材費に回せたはずだと、ふと考える。けれど教に使わなければ、会うことのなかったたちがいる。それを無駄だったとはえなかった。
由美は学の美術教師への相談をしていた。作品をまとめて見せると、教師は「夜へくに、昼に勤めながら学べる印刷会社も調べてみなさい」と勧めた。由美は母にその話をし、学費を減らす方法を緒に考えた。親が全部してくれれば楽だが、自分の学びを親のけんかの材料にしたくなかった。
その夜、信夫は子をへ呼んだ。由美も交え、で卓に座った。子がをてから、はっきりで顔をわせるのは久しぶりだった。信夫は娘のの話を聞き、学見学のことを尋ねた。由美はまだ決めていないと答えた。「父ちゃんが反対するから諦めるんやなくて、私が納得できるところを探したい」。信夫はうなずいた。
事の途、由美は母がいないに度、の鍵をなくしかけたと打ちけた。信夫はらなかった。子は娘が放課にへ戻り、夕飯の仕度まで気にかけていると聞いて胸が痛んだ。
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「がけんかしたせいで、由美の仕事が増えたんやね」。由美は「とも、私に何でも言ってええってってたんやろ」と答えた。父と母は揃って黙った。をたことが違いだった、と子はわない。しかし自分の決断で娘にも負担がかかったのは事実である。「これからは私らの用事を、先に由美へ押しつけんようにしよう」。信夫は「俺もそうう」と答え、初めて娘へ謝った。
次に子の教の話になった。信夫は「計からしてるがあるんか」と聞いた。子は賞と参加費の記録を見せ、活費にはをつけていないことを説した。信夫は驚いた。妻がこんなに細かくのを預かり、帳尻をわせていたことをらなかったのである。それまで妻の買い物の記録を見たこともない自分が、今さら教の会計だけ尋ねるのもおかしかった。
「来は会代ががるんです。続けられるか、まだ決まりません」
「俺の料で穴埋めするのは難しいぞ」
「頼んでません。続けるなら、教として回せるようにします」
子は言いながらし寂しくなった。夫が伝うと言ってくれないことではない。とも、自分の取り分を守る話ばかりしてきたことが寂しかったのである。信夫は計簿を引き寄せ、「灯油代が先よりがったんやな」と言った。
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子が「あれだけえたら仕方ない」と答えると、由美が笑った。「やっと普通の話になった」。はつられて笑った。
帰り際、信夫は子に「へ戻ること、考えてるか」と尋ねた。子は「考えてはいる。でも、戻ったら教をやめなあかんのなら戻れへん」と答えた。信夫は初めて条件をつけずに「そうか」と言った。妻がいない活は便で、今も好きにはなれない。しかし便だから戻れ、というのは、謝ることではないと分かった。
正のために子は桂子のへ戻った。信夫と由美はで台所にち、雑煮の材料を切った。娘が「母ちゃんの作り方と違う」と言うと、父は「うちのいうんは、これから決めたらええ」と答えた。由美は根の切り方を教えながら、母がに戻るかどうかとは別に、自分ものことをできるようになりたいとった。