みかん小説
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"昭和46年、優勝した妻に夫が告げた「帰るな」" 第1話

賞品のトロフィー

最の本が倒れた、榎本子は自分のの甲を見た。指には数の炊事でできたさな傷があり、親指の付け根には、今朝も洗濯物を絞ったの赤い跡が残っていた。そので放した球が、いピンを本とも倒したのである。阪府阪の「あさひボウル」に拍が起こり、スコア係の青がゲーム計百点と読みげた。

「榎本さん、優勝ですよ。婦の部じゃありません、会全体の位です」

子は歳になっていた。隣でびがっているの由美に腕を引かれても、初めは違いだとった。の組の男が百点をしたから、自分には縁のない話だと考えていたからだ。通っていた曜午の練習会では、隣の主婦と百点にも届かないゲームをして笑っていたことがある。今は腕の振りとがうまくった。それだけだった。

町内親睦会の等賞は、ぶりなのトロフィーと万円の賞だった。賞品を渡した支配の栗田が「子さんの投げ方は、力を抜くところがいい」と言うと、客席から「ご主もがいやろ」と声がんだ。子は夫の信夫を捜した。来ると約束していた夫の姿は見えず、由美は目をそらした。「父ちゃん、の得先と約束があるんやて」

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。娘が先ほど聞いたらしい。

その夜、子はトロフィーを卓に置いた。信夫は問の帳から帰り、着も脱がずに聞をいていた。由美が「母ちゃん、百やで」と説すると、信夫は「女が何点取っても、飯が炊けるわけやない」と答えた。夕飯はとうに用してあり、噌汁は度温め直していた。子はそれを言わなかった。

「来から、あそこで奥さん方に投げ方を教えてみようかって話もたの。平の昼だけやけど」

信夫は聞を畳んだ。「主婦が男に交じって遊び歩くとは何事や。優勝したからって、調子に乗るな」。由美がをきかけると、父は娘にも座れと言った。「このには順序がある。おが歩いて、所から何と言われる」。その言葉を聞いた子は、賞の封筒をのへ隠した。教に使えるかもしれないとっていたである。

「のことは、全部済ませてからています」

「言い訳するな。そんなにボウリングがええなら、もうには帰るな」

信夫はトロフィーを取りげ、仏壇の脇の戸棚に押し込んだ。子は言い返す代わりに、湯呑みをつ台所へ運んだ。流しには信夫の弁当箱が置いてあり、蓋の内側には梅干しのが残っていた。子は洗いかけてを止め、寝からさな鞄を取った。

「分かりました。でも、のお弁当は自分で作ってくださいね」

由美がちがった。「母ちゃん、どこくの」。子は娘の肩を度たたいた。「桂子さんのところ。配せんで。学へはいつも通りき」。信夫はで笑った。の朝になれば妻は戻り、いつも通り炊飯器の蓋がくだろうとっていたのである。

子がていった、由美は卓のの万円の封筒に気づいた。母は賞を円も持っていかなかった。封筒の裏には、鉛でさく「靴、練習代、案内の」といてあった。由美は父に見せようとして、やめた。父はすでにテレビの音をきくしていた。

翌朝、信夫はいつもより分く起きた。台所には米も噌もあったが、飯は炊けていない。弁当箱は昨夜と同じ位置に置かれ、梅干しの跡が乾いていた。そこでようやく、子が本当に帰ってこなかったのだとった。

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