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"出征前夜、夫から突然の離縁状――日記に隠された本心" 第16話

度目の縁談

そのの午、淳さんは庭へた。

柿ののにち、幹にを触れていた。

「きくなりましたか」

私が尋ねると、首を振った。

「くらいでは、そんなに」

「私は変わりましたよ」

「それは分かります」

「どこが?」

「なら、私をあんなに叱らなかった」

私はし笑った。

「旦様が悪いんです」

「はい」

素直に認めるので、それ以れなくなった。

しかし、まだつ事なことが残っていた。

私たちは縁している。

淳さんは帰ってきた。

だからといって、自に元の夫婦へ戻るわけではない。

夕方、淳さんが言った。

「キヌさん」

また「さん」に戻っていた。

「何ですか」

「お願いがあります」

し緊張した顔だった。

戦の話をするより緊張しているように見えた。

「、しをもらえませんか」

「何をするんです?」

「話があります」

と同じ言葉だった。

私はわざと眉をひそめた。

「また縁ですか」

「違います」

珍しく即答したので、笑ってしまった。

翌。

淳さんはで町へた。

帰ってきたのは昼過ぎだった。

には、さな包みを持っている。

座敷へ座ると、姿勢を正した。

「森川キヌさん」

旧姓で呼ばれた。

私は向かいへ座った。

「はい」

淳さんはくをげた。

「私と、もう度結婚していただけませんか」

胸の奥がくなった。

最初の結婚には、この言葉がなかった。

叔母が決めた。

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支度が渡った。

私は「はい」と答える以のをらなかった。

けれど今は違う。

断ることもできる。

できていくこともできる。

それをったで、目ののを選べる。

私はすぐには答えなかった。

淳さんも急かさなかった。

その沈黙が嬉しかった。

「つ条件があります」

「何でも」

「何でもなんて言わない方がいいですよ」

「では、聞いてから決めます」

しだけ、このも変わったらしい。

「今度は、勝に私のを決めないでください」

「はい」

「何かあったら話してください」

「はい」

「嫌なことがあれば、私も言います」

「お願いします」

「それから」

私はし迷った。

「名を呼んでください」

淳さんが目を見いた。

「それが番難しいかもしれません」

「では結婚できません」

「努力します」

真剣な顔だったので、とも笑った。

私は包みを見た。

「それは?」

「ああ」

淳さんがく。

にはさな櫛が入っていた。

価な物ではない。

「帰りで見つけました」

「私、櫛を持っています」

「っています」

母の形見の櫛。

嫁いだから事にしていた。

「これは、今のあなたに」

私は言葉を失った。

過を消すのではない。

母の形見も、叔母ので過ごしたも、全部私のだ。

そので、しいものをつ増やす。

そんなにえた。

「ありがとうございます」

櫛を受け取った。

そして、ゆっくりをげた。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

度目の縁談。

今度は誰にも決められていない。

歳のには言えなかった「はい」を、私は自分ので言った。

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