"出征前夜、夫から突然の離縁状――日記に隠された本心" 第12話
扱い
通には、「未帰還」とかれていた。
定期、所が確認できない者について理をめていること、今の続きについて役所へ来てほしいこと。難しい言葉が並んでいたが、番まで読んでも「野淳がくなった」と断定する文はなかった。
それでも、町内の々はほとんど同じに受け取った。
もう帰らないのだろう、と。
役所でも職員は慎な言い方をした。
「消息が確認できていません」
「くなったということですか」
「そこまでは申しげられません。ただ、期報がなく……」
私は類を見つめた。
「遺骨は?」
職員は黙った。
「くなった所は?」
答えはない。
「見たは?」
「確認できていません」
私は類を畳んだ。
「では、まだ分からないんですね」
職員が困ったような顔をした。
「お気持ちは分かりますが」
「分からないんですね」
もう度言うと、男はさく頷いた。
「はい。確定した報ではありません」
それで分だった。
私は帰宅した。
玄関をける。
誰もいない。
それでも「ただいま」と言った。
すると議なことに、し気持ちが落ち着いた。
数、叔母がらせを聞いてやってきた。
「今度こそ分かっただろう」
私は黙って茶を置いた。
「もう待つのはやめな。あんたもいつまでも若くないんだ」
「まだです」
「もうだよ」
叔母にとって、女のは誰かに嫁ぐことで決まるらしい。
広告
以の私なら、その価値観に疑問も持たなかった。
でも今は違う。
「私、働いています」
「それがどうした」
「でもべていけます」
叔母はで笑った。
「女で?」
「はい」
はっきり答えた。
「で暮らせるから、誰かと緒に暮らすかどうかも自分で決められます」
叔母は何も言わなくなった。
私は続けた。
「淳さんが帰らなければ、ずっとでいると決めたわけではありません」
にした自分が番驚いた。
以なら「待ちます」と言っていたかもしれない。
けれど、で暮らして分かった。
待つということは、自分のを止めることではない。
私は働く。
笑う。
所のと事もする。
にはを見る。
それでも淳さんを待つ。
「もし、いつか私が別のを選びたくなったら、そのは自分で選びます」
叔母をまっすぐ見た。
「叔母さんには決めさせません」
叔母はく黙っていた。
やがて、初めてし疲れた顔をした。
「くなったね」
褒め言葉なのか嫌なのか分からなかった。
「いいえ」
私は首を振った。
「今まで、自分が決めていいとらなかっただけです」
叔母はその、再婚の話をしなかった。
帰り際、玄関でさく言った。
「野さんが帰るといいね」
驚いて顔をげたには、もう背を向けていた。
そのはがかった。
朝、井戸の周りにい氷が張った。
私はいつも通り竈にを入れた。
湯が沸く。
瓶に注ぐ。
を入れて温度を確かめる。
淳さんがしていたのと同じように。
より私のはくなっていた。
荒れなくなったわけではない。
けれど赤くなった指を見るたび、昔の自分をいせる。
その朝も湯を用し、朝の支度を始めた。
分の噌汁。
分のご飯。
それから私は、なぜかもう膳の茶碗を棚からした。
理由は分からなかった。
ただ、そのはそうしたくなった。