"四十九日の絶縁" 第10話
赤のの境界線
『な……何言ってるのよ!?』 悦子の鳴のような切り声が、受話器を破らんばかりに響き渡った。 『なんで義理の母親の面倒を見るのに、嫁のあなたにおを払わなきゃいけないのよ! 族でしょうが! 嫁の義務でしょうが!!』
「族? 義務?」 私はく、氷のような声で笑った。 「何を勘違いされているのかりませんが、私の荷物をゴミ捨てに捨てて追いした赤のの老婆のために、無償で事や介護をして差しげるほど、私はお好しではありません。当万円に交通費実費。払いで座に振り込んでいただけるなら、ヘルパーの派遣業者を配してあげるくらいのは取って差しげてもよろしくてよ?」
『ふ……ふざけないで! あんた、それでもなの!? 罰が当たるわよ! 親を見捨てるなんて、世が許さないわよ!』 逆して喚き散らす悦子の言葉を、私は遮った。
「世? ええ、世のルールなら、私もきっちり学ばせていただきましたよ。……お義母さん。あなた、ごないのですか?」 『な、何をよ……!』
「公平さんがくなった翌週、私はすでに役所へ『姻族関係終届』を提しております」
受話器の向こうが、ピタリと音を失った。 息を呑む微かな摩擦音すら消えり、受話器の向こうに完全な空が広がる。
「……い、いんぞく……かんけい……?」 数秒、掠れた声で悦子が呟いた。
広告
「ええ。配偶者がしたに提できる法な続きです。これを受理された瞬から、私とあなた、そして浅野の親族との法な親族関係は、完全に、永に消滅いたしました。私には、あなたに対する扶養義務も、介護義務も、葬儀をす義務も、ミリたりともしません。法律、私たちはですれ違う赤のと何ら変わりないのです」
『ちょ……ちょっと、あなた! な、何て勝な真似を……! 私の許も取らずに、そんな類を勝にすなんて、無効よ! 絶対に無効に決まってるわ!』 狼狽え、パニックに陥った悦子が喚き散らす。
「残ながら、姻族関係終届は残された配偶者の単独ののみで提できる制度です。あなたの許も、承諾も、事報告すら法には切必ありません。……むしろ、謝していただきたいくらいですわね。『嫁は所詮赤のだ』と私を追いしてくださった、あなたの望み通りにして差しげたのですから」
『ひ……っ、ひいいいっ! 待って、裕子さん! お願いだから見捨てないで! 悪かったわよ、謝るから! この通りよ、許して……!』
「それでは、切なお客様をお待たせしておりますので、この辺で失礼いたします。度とお話なさらないでくださいね」
私は通話終ボタンを押し、即座にその番号を着信拒否リストへと登録した。 ふう、とく息を吐きして窓のを見げると、の澄み切った青空がどこまでも広がっていた。
「……ふふっ。お姉さん、見事な本勝ちでしたね!」
背から、楽しげな笑い声とともに、温かい茶のカップが私のデスクに置かれた。 振り返ると、そこには微笑むの女性がっていた。 洗練されたスーツを着こなし、く切り揃えた黒髪を揺らすそのは―― シンガポールから帰国し、がに滞していた、弟嫁のさおりさん本だった。