"四十九日の絶縁" 第4話
通夜の笑い声とガレージの残骸
病院の霊で、い布を被せられた公平と対面した瞬からの記憶は、今でも激しい痛とともに断片にしかいせない。 声をげて泣きじゃくるのを握りしめ、たくなった夫の胸に顔を埋めて「起きて、パパ、起きてよ」と揺さぶる陽翔を抱きしめながら、私は自分の涙を必に押し殺していた。
(泣いちゃだめ。私が泣き崩れたら、この子たちは誰が守るの。しっかりしなきゃ、私がこの子たちの母親なんだから) 奥歯を噛み締め、唇から血が滲むほど耐えていた私に対し、駆けつけた悦子が最初に放った言葉は、性を疑うものだった。
「夫をくしたっていうのに、涙の滴もこぼさないなんてねえ。本当にで酷な嫁だわ。血も涙もないって、まさにあなたのことね。どんな親に育てられたら、そんな面の皮がくなるのかしら!」
親族が居並ぶ病ので、私を指差して罵倒した義母。 しかし、その義母自は、の義父の葬儀の際、体どんな態度を取っていたか。 『喪主は息子の公平が全部やってくれるから、私は何もしなくていいし本当に楽チンだわ〜』 そう言ってリビングのソファーに寝転がり、テレビのバラエティ番組を見てを叩いて笑いしていたのだ。しまいには『笑いすぎて涙がてきちゃったわ』と目尻を拭っていた女が、いざ息の公平がくなると、劇のヒロインを気取って私を悪者にしたてあげた。
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そして迎えた法。 セレモニーホールでの読経が終わり、親族への御礼を済ませた直、悦子は配してあった級仕し弁当の袋を両に抱え、親族にこう言い放ったのだ。 『それじゃあ裕子さん、私と子供たちはこのお弁当をへ持ち帰ってべるから、会の精算と片付けはあなたが全部やっておいてちょうだいね! タクシーので子供たちがお腹を空かせて待ってるから、お先に失礼するわ!』
そうして子供たちを連れり、私に始末を押し付けて逃げ帰った悦子。 、私がい取りで義実へ戻ったに待っていたのが――冒の、あのガレージの粗ゴミ置きに積みにされた、私の私物の段ボール箱だったのだ。
「さあ、荷物は全部に積んだかしら?」 ガレージのシャッターに寄りかかり、くちれとばかりに首の計を見つめる悦子。 の夕暮れはく、たいが私の喪の裾を激しく揺らしていた。
「お義母さん。子供たちは親戚のにいるとおっしゃいましたね。どこのお宅ですか? 私が今から迎えにきます」 「あら、言わなかったかしら? い親戚のよ。子供たちもねえ、父親がんで精神に定なのよ。あなたみたいな血な母親ときりにさせるより、優しい親戚に囲まれていた方がでしょうに。
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の朝にはちゃんと送り届けさせるから、今夜はでゆっくり反省なさい!」
そう言って、悦子はガチャンと音をてて扉を閉め、内側から頑丈な鍵をかけた。 閉ざされた黒い格子の向こう側で、義母は嘲笑を浮かべながら背を向け、玄関のへと消えていった。
私は、息を呑んだ。 自分の――公平が遺してくれたさなファミリーカーの荷台に、無残に放り込まれた段ボール箱を見つめる。 でに乗り込み、エンジンをかけた。 向かう先は、かつて公平と子供たちと暮らしていた、あの自宅。 同居の際に賃貸にすことも考えたが、公平が『いつか修平たちが帰ってきたら、また族でここへ戻ろう』と言って、具もそのままに残してあった、私たちの本当のだった。
自宅に帰り着いた私は、喪を脱ぐもなく、を掃除し始めた。 雑巾を絞り、掃除をかけ、子供たちのベッドにシーツを敷く。 計の針が午を回った、私は胸騒ぎを抑えきれず、義実の固定話へダイヤルした。
プルルル……プルルル……。 回以のコールの、受話器の向こうから聞こえてきたのは、らかに寝起きを装った、気だるげな悦子の声だった。
『……はい、何かしら、夜分遅くに』 「お義母さん、裕子です! 子供たちがまだ帰ってきません! 親戚のどなたのお宅ですか? 私が今すぐで迎えにきます!」
すると、受話器の向こうで、悦子がくすくすと悪く笑う気配がした。
『あら、裕子さん。子供たちならね、親戚のから戻って、もう私の横でぐっすり眠っちゃってるわよ』 「……え? 義実にいるんですか!?」 『そうよ。特に陽翔ちゃんがねえ、「おばあちゃんと緒じゃなきゃ絶対に寝ない!」って泣きして聞かないものだから。仕方がないでしょう?』
「そんなはずありません! 陽翔を……を今すぐ返してください!」 私の叫びを遮るように、悦子は酷な声で、信じがたい言葉を突きつけてきたのだ。
『とにかくね、今はもう遅いから無理よ。それにね、裕子さん。から子供たちを連れて、泊でディズニーランドのホテルに泊まりがけでくことになってるの。朝がいのよ。それじゃあね、度と話してこないでちょうだい!』
ガチャリ。 ツーツーという無質な切断音が、暗いリビングに響き渡った。