みかん小説
本棚

"四十九日の絶縁" 第3話

掌返しの同居と、歪んだ卓

「裕子さん、あなた男の嫁でしょう! 未になった義理の母親の面倒を見るのは、嫁として当然の義務じゃないの!」

義父の葬儀が終わってわずか週。 あれほど「のあなたと同居なんて輪際お断り」と突っぱねていた悦子が、血相を変えて私たちの自宅へ転がり込んできた。 『母さん、それはあまりにも勝すぎるよ。あれだけ裕子を傷つけておいて、になったから同居しろだなんて、筋が通らない』 公平がりをわにして拒否すると、悦子はリビングのにへたり込み、ハンカチを顔に当てて嘘泣きを始めたのだ。

『ひどい……! 父親がんだ途端に、母親を見捨てる気なのね! 別に面倒を見ろなんて言ってないわよ! 修平夫婦が赴任から帰ってくるまでの、ほんの、のだけでいいのよ! それくらい、男の嫁ならしなさいよ!』

当、次男の修平さんは商社のアジア支社へ駐しており、帰国は数の予定だった。 暮らしになった齢の母を放置するわけにもいかず、板挟みになって苦しむ公平の姿を見かねた私は、苦渋の決断をした。 「……分かりました。修平さんご夫婦が帰国されるまでの期限付きということであれば、お義母さんと同居します」

それが、獄の始まりだった。

広告

荷物をまとめ、私たちのを引き払って義実へと移りんだそのから、悦子の湿な嫁いびりが幕をけたのだ。

「裕子さん、あなたねえ!」 毎朝、卓に噌汁を運ぶたびに、悦子の切り声が響く。 「このお噌汁、がくて汁のすらしないわよ! 抜き料理もいい加減になさい!」 そう吐き捨てると、卓の卓塩の瓶をひっくり返し、親の仇のように汁椀のへ崩れ込ませる。

「母さん、やめろよ! 全然くないし、母さんは医師から血圧で塩分を控えろって厳に注されてるだろ!」 公平が窘めても、悦子は澄まし顔で言い返すのだ。 「私はね、好きな付けのものをべてねたら本望なの! 裕子さんの作るご飯は、どれもこれもがしなくて、べた気がしないのよ!」

そして、悦子の嫌がらせは料理だけに留まらなかった。 庭内に、歪んだ関係の亀裂を図に作りしていったのだ。

当歳だった娘のに対しては、 「全く、嬌のかけらもないげのない子だよ。母親に似て目つきばかり鋭くて」 と、すれ違いざまに聞こえよがしに悪を叩く。は賢い子だった。祖母が母である私をどれほど嫌っているかを幼に敏に察し、学から帰ると義母を避け、自に引きこもるようになった。

その方で、まだ歳になったばかりの陽翔に対しては、異常なまでの執着を見せたのだ。

広告

「陽翔ちゃん、おばあちゃんと緒に級なお菓子をべましょうねえ。ほら、ママの作るお砂糖の入っていないおやつなんかより、ずっと美しいわよ」 姉のろをついて歩こうとする陽翔の腕を引っ張り、販の甘いチョコレートやポテトチップスを無制限に与えて懐けようとする。

『おばあちゃん、僕、これべていいの?』 『いいのよ、陽翔ちゃんの好きなものは何でも買ってあげるわ。お姉ちゃんやママの言うことなんか聞かなくていいの』

を徹底に遇し、陽翔だけを物質な欲望で囲い込む。 義母が作りしたその歪んだ角形ので、私は々神経をすり減らしていた。 それでも、夜遅くに仕事から帰ってきた公平が、 『裕子、いつもすまない。母さんのこと、本当に苦労をかけるね。でも、修平が帰ってくるまでの辛抱だから。俺が絶対に裕子と子供たちを守るから』 と私の肩を揉み、温かいココアを淹れてくれたから、私は翌朝も「スマイル、スマイル」と唱えて踏みとどまることができていたのだ。

だが――その公平が、現のから転落した部を庇い、崩れてきた鉄骨の敷きになって命を落とした。 享。あまりにもすぎる、残酷な別れだった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: