"四十九日の絶縁" 第2話
魔法の呪文と血の刻印
「スマイル、スマイル。私の笑顔が、族の幸せ」
毎朝、洗面台の鏡に向かって角を指で押しげ、自らに言い聞かせる魔法の言葉。 これは、幼い頃に私を育ててくれた祖母が遺してくれた、きるための盾だった。 歳のに両親が婚し、母は蒸発、父は別の庭を作ってっていった。 親戚をたらい回しにされかけた私を引き取り、の限りを注いで育ててくれたのが、父方の祖父母だった。 学学の頃、「裕子ちゃんのお母さんは男を作って逃げたんだって」と同級にからかわれ、だらけになって泣きじゃくって帰った私を、祖母はく抱きしめてこう言ってくれたのだ。
『裕子、おは幸な子でも、な子でもないよ。が何を言おうと、胸を張っておいで。涙を拭いて、ほら、笑ってごらん。おが笑っていれば、どんな嵐だって必ずれるんだから』
その祖母も、に祖父のを追うように界した。 寄りのない私にとって、学の建築学科で会った夫・公平と、歳の娘・、歳の息子・陽翔ので築いた庭こそが、世界のすべてであり、命に代えても守るべき宝物だったのだ。
それなのに――結婚の当初から、姑の悦子にとって、私は「異物」でしかなかった。
以、初めて公平の実へ結婚の挨拶に伺ったの景は、今でも昨のことのように鮮に蘇る。
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派な本の客。座布団に正座した私に対し、悦子は番、品定めをするような値踏みの線を浴びせてきた。
『裕子さん、あなた、うちの公平と同じ級建築士の資格をお持ちなんですって? へえ、女のくせに随分と気のいこと。気な資格なんて、庭に入れば何の役にもちませんのにねえ』 『母さん、失礼だろ! 裕子は学代から必に努力して、設計事務所のコンペでも賞を取るほど優秀なんだ』 公平が窘めても、悦子は眉毛ひとつかさなかった。
『ところで、ご両親は何をなさっているの? お父様のご職業は?』 『両親は私が幼い頃に婚いたしまして、祖父母に育てていただきました。母の消息はじげず、父は再婚して別の庭を持っております』 私が包み隠さず答えた瞬、悦子の顔から切の笑みが消え失せた。
『まあ……母親が蒸発? じゃあ、母親の方に問題があったってことじゃない。浮気でもして子供を捨てたんでしょう? お里がれるわねえ。血は争えないっていうから、あなたもいつか同じようにがの庭を壊すんじゃないかしら』
あまりの毒舌に、温だった義父が『いい加減にしなさい! 様のご庭を勝に詮索するなど、無礼極まりないぞ!』としてくれたおかげで、そのは辛うじて収まった。 義父の押しもあり、公平との結婚は叶ったものの、悦子は最まで私を嫁として認めようとはしなかった。
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『のあなたと同居する気なんて、これっぽっちもありませんからね!』 そう言い放って私たち夫婦との同居を頑なに拒絶し、私たちは義実からで分ほどの所に、公平が自ら設計したさな建売宅を購入して暮らしていたのだ。 その方で、公平の歳の弟・修平(しゅうへい)が結婚した際には、 『さおりさんのご実はお医者様で柄も素らしいし、ご両親もお揃いで、本当にうちの跡取りに相応しいお嫁さんだわ!』 と、弟嫁のさおりさんを親戚に自して回っていた。
私にはたく、さおりさんには猫なで声。 そんなあからさまな差別に傷つきながらも、公平がいつも私のを握り、『母さんの言うことなんて気にするな。俺にとって裕子は最の妻だよ』と言ってくれたから、私は笑っていられたのだ。
だが、、唯の防波堤だった義父が胃がんで界したことで、平穏だった私たちの活は音をてて狂い始めたのだった。