"俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日" 第11話
赤い箱と族の誓い
季節はからを越え、にの気配が満ち始めたの旬。
週末の公平の部には、すっかりエリカの私物が自然に溶け込んでいた。洗面台には違いの歯ブラシが並び、玄関にはエリカのパンプスが置かれている。毎週末、エリカが料理を振るい、公平が子供たちを呂に入れ、でを繋いで所の公園を散歩する。そんな景が、誰に言われるでもなく常の景となっていた。
そして、学の入学説会が無事に終わった週の曜。
公平は、双子を所の信頼できるファミリーサポートに数だけ預け、エリカを都内の老舗ホテルの最階レストランへと誘った。
「伊吹君、こんな級なところ、違いじゃない?」
ガラス張りの窓から広がる京の夜景を見ろしながら、し緊張した面持ちのエリカがナプキンを膝に広げた。
「たまにはいいじゃないですか。だけでゆっくり話すのも、今が最初で最かもしれないですし」
コース料理のデザートが運ばれ、温かい茶が注がれた、公平はジャケットの内ポケットから、ベルベット張りのさなの箱を取りし、テーブルの央へと静かに滑らせた。
エリカのきがピタリと止まった。
息を呑み、線を箱から公平の顔へと恐る恐る移す。
広告
「……これ、何?」
「けてみてください」
震える指先でリボンを解き、蓋を押しげる。
そこにあったのは、シンプルだが凛とした輝きを放つ、粒ダイヤのプラチナリングだった。
「エリカさん。俺と結婚してください」
公平はエリカの目を真っ直ぐに見つめ、語語を噛みしめるように伝えた。
「俺には、妹から託されたもことりこがいます。を育てげることが、俺のの何よりもい責務です。でも、俺はあなたに『母親代わり』になってほしいからプロポーズしているんじゃない。俺が、の男として、あなたという女性をからしているから、をかけてあなたを幸せにしたいんです。……俺たちの族になってくれますか」
エリカの両が、元を覆った。
きな瞳から、止めどなく涙が溢れ落ち、テーブルのいクロスに染みを作っていく。
施設でまれ育ち、誰かに「選ばれる」ことなど諦めてきてきた女性。
族を失い、で圧に耐えかねて潰れそうになっていた男性。
が歩んできた険しいのりのすべてが、この瞬のためにあったのだと確信できるほど、く、いがを包み込んでいた。
「……はい」
エリカは涙声のまま、何度も、何度も力く頷いた。
「私でよければ……、あなたの隣にいさせてください」
公平はリングを取りし、エリカの細いの薬指へと滑らせた。
サイズは、完璧だった。
夜景のを反射して煌めくダイヤのは、これから始まるのしい航を祝福するように、どこまでも温かく瞬いていた。