"俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日" 第10話
つの湯呑みとさな約束
のカフェでの告から、の世界は静かに、しかし劇にを変え始めた。
週末の曜。夕暮れの公平のアパートの玄関で、エリカが袋から丁寧に取りしたのは、淡いピンクのキルティングで作られた提げ袋だった。
袋の央には、丁寧な縫いの刺繍が施されていた。いをぴんとて、赤いリボンをつけた真っな子うさぎが、針針、魂を込めるように細やかに縫いげられている。
「りこちゃん、約束のうさぎさん、できたよ」
エリカが膝をつき、提げ袋を差しすと、りこは両でそれを抱え込んだ。
指先で、い刺繍の凹凸を何度も、何度もなぞる。
「……ちゃんとうさぎさんだ」
「当たりでしょ。お姉さんが徹夜で縫ったんだから」
エリカが笑うと、りこは袋に顔を埋めるようにして、さく「ありがとう」と呟いた。その元が、隠しきれないびで真っ赤に染まっている。
「もこちゃんのは、これね」
取りされたもうつの袋は、もこのリクエスト通り、のチャームが揺れる鮮やかなキラキラのバッグだった。もこは歓声をげてリビングをね回り、自分の宝箱からお気に入りのシールを引っ張りして見せびらかした。
その夜、で囲んだ夕の卓は、これまでにない温かさに満ちていた。
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公平が作った豚肉の姜焼きと具だくさんの豚汁に、エリカが持参した作りのポテトサラダが並ぶ。もこが幼稚園での来事を振り振りで話し、エリカがそれに相槌を打ち、りこが折クスリと笑う。
事が終わり、子供たちが並んで布団に入って眠りについた、台所には静けさが戻っていた。
公平はヤカンでお湯を沸かし、つの湯呑みにほうじ茶を淹れた。
ダイニングテーブルのパイプ子に腰掛けたエリカは、湯呑みを両で包み込み、ちる湯気をじっと見つめている。
「……子供たちが寝ると、急に静かになりますね」
公平がお茶をすすりながら切りすと、エリカはふっと表を緩めた。
「そうね。でも、とてもいい静けさだわ」
「俺、こういうに慣れていなくて。誰かとで、こうしてお茶をむなんて、妹がきていた頃以来です」
「私もよ。ずっと暮らしだったから、誰かの息遣いがする部にいること自体が、なんだかみたい」
エリカは湯呑みを見つめたまま、独り言のように続けた。
「施設をてから、ずっと気を張ってきてきたの。誰も助けてくれない、自分のでたなきゃいけないって。……でも、あなたと子供たちを見ていると、頼ることや、誰かのためにきることって、こんなに温かいんだってえるのよ」
「エリカさん」
公平がその名を呼んだ瞬、エリカはしだけ驚いたように目を見張った。
職の「桐主任」でも、よそよそしい「桐さん」でもない。公平自のからの呼びかけだった。
「俺たちと緒にいてくれませんか。俺じゃ、どうしても埋められない穴がたくさんあります。……でも、それ以に、俺自が、あなたと緒にこれからのを歩みたいんです」
エリカの瞳に、再び涙が溢れした。しかし、今度は零れ落ちることなく、柔らかな笑顔となって弾けた。
「……んで。私を、族にしてね」
は静かに笑いい、めかけたお茶をみ干した。
孤独だったつの魂が、互いの傷を抱きしめうようにして、つの確かな形を紡ぎ始めた瞬だった。