"俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日" 第4話
ランドセル売の遭遇
に入り、の商業施設には斉に「来ご入学」の鮮やかなポスターが掲げられるようになった。
れの曜。公平はもことりこのを引き、郊の型ショッピングモールの最階にあるランドセル特設売を訪れていた。休とあって、売は祖父母を連れた族連れでごった返し、子供たちの歓声と員のアナウンスが賑やかにび交っていた。
「わあーっ! パパ、見て見て! これすっごいい!」
売にを踏み入れた瞬、もこがを振りほどいて駆けした。
並べられた数種類のランドセルを当たり次第に触り、ピカピカのエナメルを撫で回している。
「これ! もこ、絶対にこのピンクがいい! ハートのキラキラがついてるやつ!」
鮮やかなビビッドピンクのランドセルを背負い、鏡ので誇らしげにポーズを取るもこ。公平はその姿を苦笑いしながら見守りつつ、自分のろに歩隠れるようにしてっているりこへと線を落とした。
りこは、吊るされたランドセルの列を、しれた位置から静かに見つめていた。決して自分からを伸ばそうとはしない。
公平はしゃがみ込み、りこと目線をわせた。
「りこは、どれがいい? 好きな、選んでいいんだぞ」
「……どれでもいい」
ぽつりとした、消え入りそうな声だった。
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「どれでもいい、なんてことないだろ。、毎背負うんだから。ほら、赤もあるし、もあるぞ」
りこは線を彷徨わせ、やがて番端の棚に置かれていた、淡いラベンダーのランドセルにほんの瞬だけ目を留めた。だが、すぐに線を元へと落としてしまう。
公平はその僅かな線のきを見逃さなかった。ちがり、そののランドセルをにとってりこのに差しした。
「これ、綺麗なだな。背負ってみるか?」
りこのさな指先が、ランドセルの革ベルトに触れた。触れて、すぐに引っ込められた。
「……うん」
それだけだった。もこのように鏡のでね回ることもなく、ただ背にみをじながら、じっとを見つめている。だが、その横顔には、ほんの微かに、隠しきれない嬉しさが滲んでいた。
「よし、決まりだな。もこはピンク、りこはラベンダーだ」
公平はつのランドセルを抱え、レジの列へ向かおうとした。
そのだった。
通を挟んだ向かい側、級牛革モデルが並ぶ落ち着いた特設ブースに、見覚えのあるスラリとしたろ姿があった。
仕ての良いチャコールグレーのパンツスーツ。まっすぐに伸びた完璧な背筋。肩にかかる艶やかな黒髪。
(……え?)
公平のが、ピタリと止まった。
その女性は、売りの員と何やらにカタログを見比べながら、元のメモ用にペンをらせていた。
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際よく複数のランドセルの展示見本を確認し、革の縫製や耐久性について専な質問を投げかけている。
横顔が見えた。
いすぎた鋭い輪郭、引き結ばれたい唇。
経理課の「氷の女」——桐エリカだった。
(な、なんで桐さんがここに……?)
公平の全に、や汗がどっと噴きした。
休、よりによって自宅かられたショッピングモールのランドセル売で、職で最も顔をわせたくない相と遭遇する。これ以の悪があるだろうか。
しかも、エリカはだった。夫らしき男性の姿も、子供の姿もない。それなのに、彼女の目のには、男子用の黒いランドセルと、女子用の赤いランドセルが、それぞれ複数個並べられていた。
(お子さんがいるのか? いや、社内の事台帳では独のはずじゃ……)
揺のあまりち尽くしていると、もこが公平の裾を引っ張った。
「パパ、くー! お腹空いた!」
その甲い子供の声に反応したのか、向かいのブースにいたエリカが、ふっとこちらを振り返った。
線が、真正面から激突した。
エリカの瞳が、驚愕に見かれた。いつもの能面のような徹な表が瞬で崩れ、揺のがその瞳を駆け抜ける。
公平の臓が鐘を打った。逃げしたい衝に駆られたが、すでに目がってしまっている。公平は引きつった笑いを浮かべ、ペこりとぎこちなく会釈をした。
エリカもまた、固まったまま、さく会釈を返してきた。
それ以の言葉は交わされなかった。公平はつのランドセルを抱え、逃げるようにレジの列へとに歩きった。
背に、エリカのあの突き刺すような線が、じっと注がれ続けているのをじながら。