"離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私" 第12話
母が初めて断った
介護サービスを利用し始めるまで、母にはまだ抵抗があった。
初めてヘルパーが来る朝、母は普段よりく起きてを掃除した。
「そんなに掃除しなくてもいいでしょう」
私が言うと、母は困った顔をした。
「でも様が来るんだから、汚いとわれたら恥ずかしいじゃない」
結局、ヘルパーが来るに母が疲れてしまい、膝を痛そうにさすっていた。
私は苦笑した。
しかし数回利用すると、母の態度はしずつ変わった。
買い物を頼める。
い布団をかしてもらえる。
呂で転ばないよう見守ってもらえる。
何より、由紀さんが毎回んでこなくても活が回る。
母は初めて、その便利さを実した。
ある、親戚の叔母から話があった。
母はし困った顔で受話器を持っていた。
「今度病院へくんでしょう? 由紀さんに連れていってもらえばいいじゃない」
話の向こうから聞こえるきな声に、私は黙って母を見た。
以の母なら「そうね」と答えていただろう。
しかし母はしを置いたあと、言った。
「いいの。今回は送迎サービスをお願いしてるから」
「おがもったいないでしょう」
「由紀さんにも活があるから」
私は驚いた。
母はさらに言った。
「何でも族に頼めばいいってものじゃないわ」
話を切ったあと、母は気まずそうに私を見た。
「何よ」
「別に」
私は笑った。
母もしだけ笑った。
さな変化だった。
けれど「頼まない」と言うことは、母にとって簡単ではなかったはずだ。
これまでは誰かへ頼ることこそ族の証だとっていた。
それが初めて、相のを守るために断ることも族なのだと理解し始めていた。
父にも変化があった。
最初は拒んでいたすりを、自分から「呂にもあった方がいい」と言った。
事の、父は業者の作業をずっと見ていた。
以なら病扱いされたとっただろう。
今は完成したすりを握り、「悪くないな」とさく呟いた。
健太がそれを聞いて笑った。
「につけとけばよかっただろ」
父は嫌そうにを鳴らした。
けれど誰もらなかった。
族の空気が、しずつ柔らかくなっていった。