"離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私" 第2話
帰る所
婚の部を引き払う準備は、像していたよりあっけなかった。の結婚活は、きなスーツケースつと数箱の段ボールに収まった。夫婦で買った具も器も、今さら欲しいとはわなかった。いとして持ち帰りたいものさえ、ほとんど残っていなかった。
億円があれば、都に派なマンションを買うこともできるだろう。ホテル暮らしをしながら、ゆっくり居を探すことだってできる。それでも、そのの私が求めていたのは豪華な部ではなかった。何も考えずに眠り、朝になれば誰かの気配がする所が欲しかった。
そこでい浮かんだのが実だった。
両親のむには、弟の健太が妻の由紀さんと子どもと緒に暮らしている。私は結婚してからくへ移り、帰省もに度か度ほどになっていた。それでも実だけは、自分がいつ戻っても変わらず残っている所だと、どこかでい込んでいた。
母にはの夜、「し帰るね」とだけ連絡した。婚のことも、宝くじのこともかなかった。顔を見てから話せばいいとった。億円のから両親にいくらか渡し、古くなったを直すのもいい。健太たちにも負担をかけずに済むよう援助すれば、きっと皆がぶだろう。
の窓から流れていく景を見ながら、私は久しぶりにしるい未来を像していた。
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最寄り駅に着くと、とほとんど変わらない商があった。夕方の空気には焼き魚や噌汁の匂いが混じり、どこかのから子どもの笑い声が聞こえた。スーツケースの輪が舗装の継ぎ目を越えるたび、カラカラと乾いた音をてる。
やがて、古い実が見えてきた。階の番奥にある、かつて私が使っていた部の窓にはカーテンが閉まっている。あそこで数週休ませてもらい、そのに今の活を考えればいい。私はそう信じてをけた。
インターホンを押すと、返事をしたのは母ではなく健太だった。
玄関がき、よれたTシャツとジャージ姿の弟が顔をした。歳になった健太は、記憶のよりずっと老けて見えた。目のにはい隈があり、頬もしこけている。
「ただいま」
私ができるだけるく言うと、健太は何も答えなかった。線は私の顔ではなく、横に置かれたきなスーツケースへ落ちていた。
「姉ちゃん、それ何」
「ちょっとね。しばらくこっちで休ませてもらおうとって」
言い終えるに、健太の表が変わった。驚きではない。らかな警戒と苛ちだった。
「無理だから」
瞬、が分からなかった。
「無理って、何が?」
「そのままのだよ。姉ちゃんが戻ってくる部なんてないから」
私はわず階の窓を見げた。
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「私の部、空いてるでしょう。しのだけだから」
「しって何だよ。ていくのか?」
「まだ決めてないけど……」
その瞬、健太が声を荒らげた。
「勝なこと言ってんじゃねえよ!」
静かな宅に鳴り声が響いた。私は反射にスーツケースの取っを握りしめた。
「姉ちゃんさ、自分の実だから、いつ帰ってきても自分の所が残ってるとってるんだろ」
弟は歩へて、まっすぐ私を見た。
「このに、姉ちゃんの居所はない」
胸の奥へたいものを突き刺されたようだった。
夫に捨てられても、実に帰れば何とかなる。両親なら受け入れてくれる。そう信じてに乗ってきた私の逃げが、玄関先で音をてて崩れていった。
奥から母が慌てててきた。
「健太、そんなきな声をさないの。所に聞こえるでしょう」
そして母は私に「とりあえず今はがりなさい」と言った。しかし、その言葉は娘の帰宅をぶものではなかった。健太の顔をうかがいながら、を収めるためににした言葉だと分かった。
私はいスーツケースを自分で抱え、軋む階段をった。
階の奥のドアをけた瞬、私はち止まった。
そこに、私の部はなかった。
ベッドは消え、代わりに古い箪笥、段ボール、扇、ストーブ、子どものおもちゃが隙なく詰め込まれていた。
完全な物置だった。
私は荷物のにスーツケースを置き、へ腰をろした。
、私はこののが止まっているとっていた。
けれど止まっていたのは、ではない。
私の記憶だけだった。