"元夫に投げつけられたカード、残高は一億五千万円" 第8話
途絶えた跡と御の再訪
吹き抜けるが、私の頬にこびりついた涙の痕をたく撫でていった。
課から渡されたメモに記されていた所は、若のある町からJRの各駅と線バスを乗り継ぎ、以もれた隣県のあいの集落だった。
古いトタン根の造アパート「静荘」。錆びついた階段を駆けがり、階の角部のインターホンを震える指先で押した。
ピンポーン。
属な乾いた音が響く。しかし、数分待っても応答はなかった。を決してドアノブにをかけると、鍵は固く施錠されている。
「……あの、何かご用ですか?」
背から声をかけられ、私は臓がねがるいで振り返った。
階段をがってきたのは、ゴミし用のポリ袋をにした見らぬ代半ばの若い青だった。
「すみません……ここに、美という男性がんでいると伺ったのですが……」
私の問いに、青は首を傾げた。
「美さん? ああ……のの方ですね。僕がここに入居したのは半ですよ。さんから聞きましたけど、のは急に夜逃げ同然で部を引き払ったらしいです」
「夜逃げ……どこへかれたか、ごありませんか!?」
「さあ……僕にはわかりません。あ、でも……」
青はいしたように顎にを当てた。
「入居する直、真っ黒な級に乗ったヤクザみたいな男たちが何も押し寄せてきて、ののき先を教えろって、さんに鳴り散らしていたことがありましたよ。
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警察を呼ぶ寸まで揉めて……あの、何か危険な連に追われていたんじゃないですか?」
全の血が引いていくのをじた。
半。すでに百の魔のは、のこの潜伏先にまで伸びていたのだ。は髪でその包囲網を脱し、再び暗のへと姿を消した。
がかりは、完全に途絶えてしまった。
携帯話の番号はすでに解約されており、子メールも送信エラーでね返ってくる。に記されたの言葉が、痛ましいほどに胸を締め付けた。
『ひなこ、蒼太。もう度、君たちの声が聞きたい。抱きしめたい。……でも、俺がきている限り、君たちにづくことは許されない』
夕暮れのバスのベンチに座り込み、私はえ切った両で顔を覆った。
無力だった。何の力もない、ただののライン。億千万円というを遺されても、私はする夫の居所ひとつ突き止めることができない。
その、脳裏に閃くものがあった。
——の族。
あの御の構えの豪邸。私を見し、棒猫のように扱い、が「会社をきくするための駒」として忌み嫌っていた、あの酷な義両親。
もし、がき延びるために、あるいは何らかの決着をつけるために、過の因縁と向きっているとしたら。あの族の元に、何らかの痕跡が残されていないだろうか。
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私はちがり、スマートフォンを取りした。
記憶の奥底に封印していた義実の代表番号を呼びし、通話ボタンを押す。
回、回。苦しい呼びし音の末、受話器が取られた。
『……はい、美でございます』
聞こえてきたのは、と変わらない、あの氷のように徹な義母・かよの声だった。
「お義母様……松浦ひな子です。さんのことで、お話ししたいことがあります」
受話器の向こうで、息を呑む気配がした。次の瞬、切り声のような罵声が鼓膜を突き破った。
『よくも抜け抜けと話をかけてこられたものね! 息子のを狂わせた疫病神が! が今どうなっているか、あんたっているの!? あの女のせいで、うちの会社も、も、全部めちゃくちゃよ!』
「あの女……? 赤嶺百のことですか!?」
『……ッ!』
かよの言葉が詰まった。直、ガサゴソと受話器が乱暴に奪われる音が響き、くな男の声が割り込んできた。義父・厳郎の声だった。
『……ひな子さんか。今すぐ、がへ来なさい。直接、話さねばならんことがある』
威圧に満ちた声だったが、かつてのような傲さは消え失せ、底れぬ疲弊と切迫が滲みていた。