"「片親の貧乏人」と息子を叩いた社長、母の正体を知って絶句" 第3話
息子がいなくなった瞬
最初の、若菜は申し分のない女性だった。
料理を運べば「ありがとうございます」と両を添え、祥太が話しているには楽しそうに相槌を打つ。父親が経営する品メーカーで経理を担当しており、将来は会社を継ぎたいとも話した。
「父の背を見てきたので、いつか私も経営者になれたらとっています」
若菜がそう言うと、祥太は嬉しそうに頷いた。
「若菜ならできるとうよ。俺も支えるから」
が顔を見わせて笑う姿を見て、私はからほっとした。
ところが、そのだった。
祥太のスマートフォンが鳴った。
「ごめん、会社からだ。ちょっとで話してくる」
祥太がリビングをていき、廊の奥へ消える。
ドアが閉じた直だった。
若菜の笑顔が消えた。
ため息をつき、私のブラウスをからまで眺めた、眉をひそめる。
「……期待れ」
さな声だったが、確かに聞こえた。
「若菜さん?」
「いえ、なんでもありません」
そう答えながら、彼女はもう笑っていなかった。
「お母さん、そのって何のものですか?」
「くらいだったかしら」
「?」
驚いたように目を丸くした、若菜はで笑った。
「今って、息子さんが結婚相を初めて連れてくるですよね。普通、しいくらい用しません?」
言われているが分からず、私は自分のを見ろした。
広告
いブラウスに濃紺のパンツ。派ではないが、特別古びてもいない。むしろと会うによく選んでいるだった。
「私はこれで分だとっているけど」
「もしかして、おに困っているんですか?」
わず顔をげた。
「どうしてそうなるの?」
若菜は答えず、今度は部のを見回した。
「このテーブルも結構古いですよね。棚も傷があるし。うちなら、とっくに買い替えています」
その具は夫がきていた頃から使っているものだった。
確かに細かな傷はある。けれど壊れてはいないし、いもある。私は気に入っていた。
「まだ使えるものを捨てる必はないとっているの」
「そうなんですね」
若菜は笑った。
「活があって素敵ですね」
褒め言葉の形をしているが、声にはらかな嘲りが混じっていた。
「若菜さん。あなた、祥太のでは随分印象が違うのね」
そう伝えると、彼女は瞬だけ目を細めた。
「そんな言い方、やめてください。私はお母さんのためをって言っているんです」
「私のため?」
「両の顔わせがありますよね。うちの両親はなりに厳しいので、その格好では祥太さんが恥をかきますよ」
穏やかに返そうとった。
だが、ここまで骨に見されれば愉にもなる。
「忠告ならありがたいけれど、のやを馬鹿にする必はないでしょう」
広告
「馬鹿にしてませんよ」
若菜は頬を膨らませた。
「お母さんって、ったよりが狭いんですね」
その瞬、廊から音が聞こえた。
祥太が戻ってきたのだ。
すると若菜は驚くほどく表を変えた。
「お帰り。仕事、丈夫だった?」
先ほどまでのたい目が嘘のように、柔らかな笑顔を浮かべる。
「うん。で何話してたの?」
「祥太のさい頃の話。ね、お母さん」
私は瞬言葉を失った。
ここで全部話そうかともった。
だが若菜は平然としている。今伝えたところで「そんなこと言っていない」と否定されれば、初対面の女性を嫌って嘘をついた母親に見える能性さえある。
「……そうね」
そのは黙ってを見送った。
しかし夜になっても胸の奥の違は消えなかった。
私は祥太へ話をかけた。
「今、?」
「うん。どうしたの?」
迷った末、昼の来事を話した。
祥太はしばらく黙っていた。
「そんなことがあったんだ……」
「若菜さんにも事があったのかもしれない。でも私はし配になったの。このまま結婚して丈夫なのかなって」
「母さん、ごめん」
「あなたが謝ることじゃない」
祥太は若菜と話すと言った。
数、いがけず若菜本から話がかかってきた。
「お母さん、先は申し訳ありませんでした」
声は震えていた。
「私の言い方が悪かったです。両親が見た目や柄に細かいので、お母さんが嫌ないをしないようにとって……」
涙声で謝られれば、それ以責めることもできない。
私は彼女を許した。
ただ、話を切る直、若菜はこんなことを言った。
「私、本当に祥太さんのことを切にっています。だから結婚のおのことも、今のうちにはっきりさせておきたいんです」
そのは、く考えなかった。
週。
祥太がでへやってきた。
そしてい表で切りした。
「母さん。若菜に言われたんだ。結婚したら、母さんへの仕送りは絶対しないでって」
私はわず聞き返した。
「……仕送り?」