"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第12話
証のない
、操のもとに通のが届いた。隣県の裁縫学へ通うために必な、梓女学の卒業証についての問いわせだった。操は学のつもりではなかったが、ちせに針仕事を学ぶなら専の学で基礎から習ってみろと言われ、のに資料を取り寄せていたのである。
学は課程を修した徒の記録を保していた。けれど操は、まだ卒業証を受け取っていない。母が「修したことは事実だろう」と言っても、操はだった。あの式でをらせたことによって、自分が学んだまで消されてしまうのではないか。
操は佐伯を訪ねた。佐伯は職員の隅に移されていたが、机を片づけている途だった。「卒業に必な学業は終えています。学の記録までなくなることはありません」と言って、操をへ連れていった。は証の発を拒まなかった。ただし式を乱したことに対する謝罪は、別に求めると言った。
「学んだことと、あのの振るいは違う問題です」と佐伯が答えると、は疲れたように眉を押さえた。「私もそれくらいは分かっている。しかし学の秩序が崩れたままでは、次の子たちに示しがつかん」。
操はを決して言った。「私たちは卒業式を止めてしまいました。ご族や先方に迷惑をかけたことは謝ります。
広告
でも、を買えないを式からすのはおかしいとったことまで、違いだったとは言えません」。は返事をせず、窓のを見ていた。
その、卒業証は発された。操は自分の名を記したを受け取り、をた。証枚で救われたわけではない。むしろ、卒業した者として次に何をするかを、自分で決めなければならなくなったとじた。
へ帰ると、ちせは古い袴をほどいていた。卒業式で操が着ていたもので、もう度裾を直して普段着に使うという。「あのはどうなるの」と母に聞かれ、操は学との話しいがまだ続いていると答えた。
「学のを責めるのは簡単だよ」とちせは言った。「でも学にも、援会にも、桐にも、うちの女たちにも、それぞれ引き受けなきゃならないことがある。あんたたちが自分たちのことだけで終わらせずに済むなら、母ちゃんはそれが見たい」。
操は母の隣で袴の糸をほどいた。父がくなった、ちせが誰かを責めている姿をほとんど見たことがなかった。その分、何も言わずに耐えているのだとっていた。しかし母は耐えるだけのではなかった。条件の利な仕事も受け、を守りながら、次は違うやり方にできないかを考えていたのだ。
夕方、環が駆け込んできた。「同窓会から返事が来たのよ」
広告
。の差は、梓女学の卒業で、現は町でさな裁教をいている藤沢志乃だった。志乃は協力を約束していたが、最の文にはこうかれていた。
《寄付を集めるに、度、女たちの仕事の値段を皆ので確かめませんか》
操はその提案を何度も読み返した。町のにの代を払ってもらうための話ではない。の値段が何によってできているのか、実際に見てもらう集まりをこうというのだ。操は環と顔を見わせ、「これなら、母ちゃんたちが主公になれる」と言った。
操は証を鞄へ入れ、へ帰る途で文具に寄った。先には学するたちのためのノートやが積まれていた。女子のについては、良い嫁入り先が見つかれば分だと言うもいる。操も以は、母を助けるためにく働くことだけを考えていた。けれどこのかで、自分のらない技術や商いの決まりが、の暮らしをする面をいくつも見た。学ぶのは学をて終わりではない。そうい、しいノートを冊買った。