"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第11話
名を貸す仕事
の朝、宮裁縫所へ桐から使いが来た。今週に式の扱いを決めなければ、未納の着をへ引き取り、仕ての費用を改めて計算するという。はるは使いのに返事を持たせず、裁縫所の戸を閉めた。女たちのには、いっそ桐へ返して損を確定させた方がいいという声もあった。
枝が言った。「うちの子の具が悪くなった、医者に診せるまで延ばせない。着のことを毎考えていたら、次の仕事までにつかない」。はるは彼女を叱らなかった。皆が同じ暮らしをしているわけではない。困っているほどくを受け取りたいのは当然だった。
そこへ操が、同級から集めた希望表を持ってきた。が貸ししを望み、が自分のとして買いたいという。操は得げに話すつもりだったが、枝の疲れた顔を見て言葉をんだ。希望がまとまっても、支払いの宛先が決まらない限り女たちのは変わらない。
「今ある着を無駄にしないができたなら、次は誰の責任でをすかだね」とはるは言った。操は学へ話しにくと約束したが、はるは先にもうつ頼みをした。「あんたたちの代表だけじゃなく、買い取りたい子や、貸してほしい子も連れておいで。みんなの名を借りてが喋ると、また揉めるから」
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そのの午、では援会の会がかれた。徒代表として操と環、郁子と鶴子が入った。はそれぞれの希望を述べ、縫いの仕事を無駄にしない案を説した。は黙って聞いていたが、居は「借りる者が傷をつけたらどうする」と尋ねた。
環が答えた。「修繕の記録を残します。損耗と修理を区別して、ひどく破れたら直す代を払います。ただ、毎品の代を取るのとは違うといます」。居は「徒がそんな面倒なことを続けられるか」と反論した。
そこで郁子が歩へた。「私は買い取りたい側です。父に写真を見せる約束があります。でも借りるがいても、私の式の価値ががるとはいません」。これまで学の決まりを破ることに慎だった郁子が話すと、会の空気はし変わった。
しかしは、学が所者になることにはなお慎だった。「貸ししを続けるなら、卒業がいなくなったまで責任を持つがる。が代われば、話が消えてしまうようでは困る」。
操は自分の希望表を見ろした。にはの名があったが、来になればそれぞれ別の町へく者もいる。自分たちが卒業したも続けるには、名を載せて署名を集めるだけではりないのだ。
会の帰り際、佐伯は操を呼び止めた。
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「学には卒業の集まりがあるの。今まではに度、同窓会をするくらいだけれど、先輩たちのには裁縫を教えているもいる。あなたたちの問題を、卒業したにも扱えるたちへ頼んでみる?」
操は初めて、学のにも同じ女学をた女性がいることを実した。誰かにだけを頼むのではない。自分たちが続けられない仕事を、続けられる形にするための協力を頼むのだ。その夜、操は自分の名よりきな字で、同窓会へ宛てたをき始めた。
はるは会から戻った夜、女たちへをいた。次の注文が来ても、今回の負担を曖昧にしたまま働き始めるわけにはいかない、と。仕事を失うのが怖いというもいるだろう。だが、怖さをにできる所まで失えば、同じ約束をまた結ばされる。はるはずつ違う事をき留め、翌朝、仕事の机のへ置いた。誰かに揃った答えをさせるためのではなかった。自分の活について、自分で決めてもらうためのだった。