"消えた十一丁の鍬" 第22話
最まで残る鍬
昭の、解けが杉沢の田をゆっくり満たした。信は佐代の田へき、補修したの積みが崩れていないか確かめた。のに何度も凍っては緩んだは、になるとまたく。の具だけでしてよいわけではなかった。父が作った補と、たちが築いた排が緒に働いているか、目で見て確かめる必があった。
佐代は子どもを連れて田へ来ていた。夫はの浅いところでを拾い、母の邪魔にならないよう畦へ並べている。しい鍬は佐代のになじみ、の借り物よりし軽くじられた。「この柄、ちょうどいいわ」。信が「父さんが握りの所を何度も直したんです」と言うと、佐代はさく笑った。「おじさん、ようやく私のを見るようになったのね」。
の広では、属の回収に協力するための品目が集められていた。健はつずつ持ち主に確かめ、使える農具や修理する予定の物が混じっていないか見ていた。槻もそのにち、の代表だからといっての具を勝に選ぶことはしなかった。集まった量はくなかったが、何が本当になのかを説できる品物ばかりだった。
見物に来たのには、もっと集めればよいのにと満を漏らす者もいた。
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健はつひとつの品を指し、「これは使わないことをで確かめてもらいました。こちらは修理の必があるので戻しました」と説した。昨なら論になっていただろうが、今はどのの暮らしを止めるか、話のを考えられるようになった。槻は集めた量を自しなかった。で必な物を失わずに済んだことのほうが、彼にはくじられた。
徳兵は広の端で、鍬を本、持ち主へ返していた。まだ返し終えていなかった最の丁である。持ち主のは、よりさらに腰が曲がっていたが、柄のい鍬を握ると「これなら畑へられる」と言った。徳兵は「使ってみてわなければ、また直しに来てくれ」と答えた。はうなずき、ゆっくりへ戻っていった。
信は父の隣へった。「これで全部だね」。徳兵は首を振った。「具は返した。だが、あののことがなくなったわけじゃない」。信はそれ以何も言わなかった。丁を勝に潰した事実は、これからも鍛冶の仕事について回るだろう。それでも失敗したまま終わりにしないために、父はじゅう炉のに座り続けたのだ。
へ戻るで、お勢とすみが待っていた。お勢はへ昼の握り飯を渡した。「今はを閉めるの?」とすみが聞くと、徳兵は「午は父さんのを休めるだ」
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と答えた。信は驚いて父を見た。以ならが腫れても槌をさなかった男が、自分から休むと言ったのだ。すみは笑い、お勢は何でもないように弁当包みをほどいた。
翌、鍛冶にはしい修理の依頼が来た。畑の刃が曲がったという女と、仕事の具を直してほしいという老が並んでいる。信はを招き入れ、具をつずつ見た。徳兵はそのろでを起こし、息子が持ち主へ尋ねるのを聞いていた。「いつ使いますか。どういう仕事に使う鍬ですか」。昔は父のからなかった問いだった。
炉のが赤くなり、信が鉄を敷へ載せた。徳兵は槌を渡しながら言った。「鍬は鉄の塊じゃない。誰かのの仕事だ」。信はうなずいた。には相変わらずりない物がく、来のが同じように訪れる保証はどこにもない。それでも父子は、使うの名を確かめてから槌を打ち始めた。
※本作は創作説です。属類回収に関する制度や当の農活を参考にしていますが、物・・具体な来事は架空のものです。