"消えた十一丁の鍬" 第21話
までに残すもの
がり始めると、の畑はく覆われた。の枝から落ちるの音だけが聞こえる朝、信は父と並んで鍛冶の具を磨いた。のに直す物はまだある。削りの刃、牛の輪に付ける具、から薪を運ぶ橇の部品。派な仕事ではないが、暮らしのを支える具ばかりだった。
健がへ来て、の回収協力について相談した。彼は以のように「何でも集めろ」と言わず、でだと確認した品目を持っていた。「これが本当に使われていないか、緒に見てもらえませんか」。徳兵は札を受け取り、信へ渡した。「おのほうが目がいい」。信は父が仕事を譲るのをじながら、健と軒ずつ回る約束をした。
佐代のでは、夫がしい鍬を壁に掛けていた。「もう借りにかなくていいんだよ」と得そうに言う。佐代は笑ったが、隣の畑にはまだ直してほしい具がある。信は「までには必ず」という言葉を軽々しく言うのをやめ、材料を確かめてから返すを決めることにした。約束を守るには、できないことをく伝える勇気もいる。
のの寄では、の補修に使った費用と、の記録が読みげられた。弥助の畑の失われた芋は予よりく、皆で戻しただけでは補えなかった。槻は自分のの蓄えから部をし、りない分は翌の共同作業で償うと申した。
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しかし弥助は「俺が欲しいのは、来も同じことをされない約束だ」と言った。本はの管理と補修の際には関係する農全員へらせることを記録した。
弥助はそこで「だけの約束なら、また同じことになる」と言った。本は名をいた記録をの掲示板にも写し、の作業に関係するへ読んで聞かせると約束した。字を読むのが苦なへ、を渡すだけでは届かないからだ。お勢はの女性たちが集まるに説する役を引き受けた。
佐代も「田の仕事が忙しいほど、話を聞く所へけないの」と付けした。集まれないへらせを持っていく役が決まると、ようやく皆がうなずいた。信は自分が最初、にけば正しいことが自然に伝わるとっていたのを恥ずかしくじた。へ届かなければ、どんなに正確な記録も役にはたない。
徳兵も残りの農具について報告した。返せていないの名を軒ずつ呼び、材料の見込みと仕事で補うを説した。叱る者もいたし、もうよいと言う者もいた。徳兵はどちらにも同じようにをげた。信はその姿を見て、父がようやくの々ので自分の失敗を引き受けているのだとじた。
帰り、を踏みながら父が言った。「昔は、鍬を頼まれたら黙って直して返すだけでよかった。
今はそれだけではりないようだ」。信は「昔からりなかったんじゃないかな。俺たちが聞いていなかっただけで」と答えた。徳兵は瞬むっとしたが、すぐに笑った。の見える寒い夜だった。
がけても戦争は続き、鉄や炭がうようにに入る見通しはたない。信はの作業へ備え、で使える具の覧を作り直した。のには揃いな鍬の名が並んだが、その隣にくのは今度はさだけではなかった。誰が使い、いつ必とし、代わりがあるか。そのすべてを確かめなければ、のは始まらない。