"消えた十一丁の鍬" 第19話
から呼ばれる
信は呼しのらせを受け取ると、すぐに本を訪ねた。面には町の修理作業に従事できる者を調べるとあり、いつからどこで働くかはまだ決まっていなかった。の鍛冶にいても仕事がないわけではない。農具を直し、の具も作り、へ向けて仕事の具をえなければならない。
信は町ので働いた々をいした。械のつが止まれば、隣の作業も止まる。を守る厳しさや、図面を皆で共する便利さは、確かにの仕事より優れていることもあった。だが、町のが直すのは同じ型の部品がく、の鍬は持ち主ごとに形も傷み方も違う。どちらの仕事がとは言えない。自分に求められる腕の使いがつあることを、信は初めて誇りにも荷にもじた。「俺がけば、父さんのだけではりません」。信が言うと、本は「の事もわせて報告しましょう」と答えた。
で相談すると、徳兵はにも「必とされるならけ」と言った。信は腹をてた。「俺がいなくてもいいというのか」。父は首を振った。「そうじゃない。おがどこで腕を使うかまで、わしには決められん」。自分の判断だけで息子のを決めてきた父が、初めてそんな言い方をした。信は返す言葉を失い、の落ちた炉を見た。
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すみは兄にさな包みを渡した。使い古した革の袋で、父が若い頃に使っていた物をお勢が繕ったのだという。「町へくなら持っていって。でも、戻ってくるなら鍛冶の棚に置いておいて」。信は袋を広げ、擦り切れた縫い目をなぞった。弟子として叱られた々がかったが、父の仕事を続けたいとったことまで嘘ではなかった。
信は度、鍛冶のへてを眺めた。がづくにつれ、田のも鍛冶の材料も減っていく。自分がをれるが来ても、族が具のことを相談できるように、修理の方法を残しておこうとった。すみへ具の名を教えたのも、そのためだった。
数、町から担当者が来た。本がの修理作業の覧を示し、鍛冶に必なを説した結果、すぐの転は求められず、当面はの仕事を続けながら必に応じて協力することになった。信は堵したが、いつ状況が変わるかは分からない。の男がないことも、鉄のも、来になれば解消するわけではなかった。
そのに、の事はしずつんだ。佐代の田の端にはい積みを置き、増えたを古い溝へ戻すためのができた。弥助の畑では、ぬかるんだを運びして畝を作り直した。誰もが疲れ切っていたが、作業の途で異議がれば、そのでを止めて話しうようになった。
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は余計にかかる。それでも勝に決めたで壊すよりは、しずつ確かめるほうがましだった。
徳兵はの入りに、修理を預かるの札をしく作った。持ち主、使う所、返す、修理に使ってよい材料をつずつく。信が「ずいぶん面倒なことを始めたな」とからかうと、父は「面倒でも、もうあんな真似はせん」と答えた。お勢はのやりとりを聞きながら、ようやくさく笑った。
しかし、修理札を作るだけでは、失われた丁が戻るわけではない。佐代の鍬もまだ借り物の刃をつけて使っている。信は夜にしい鍬の形を描き、どのへ先に返すかを父と相談した。徳兵はの名を指さした。「佐代だ。あのには今、返してもらう具を待つがいる」。信は夫の顔をいし、うなずいた。