"消えた十一丁の鍬" 第12話
の量は平等ではない
から流れてくるはったよりたかった。信がの縁へつと、昨まで見えていたが茶い流れのへ消えていた。古い嚢のつはがほどけ、砂がしずつこぼれている。徳兵は鉄の留め具が来るまで待てないと判断し、材で板を押さえる支えを組もうとした。信は材のさとのさを測ったが、で面が滑り、なかなか寸法が定まらなかった。
健が青団の者を連れてきた。彼は鍬のことで父子と対していたが、がれば自分のも困る。槻の指示で嚢を運び、崩れかけた岸を固め始めた。佐代も作業へ加わろうとしたが、徳兵は「がいから女はがれ」と言いかけた。そこで佐代が言い返す。「この田へが来るなら、私がいちばん先にっていないと困ります」。徳兵は言葉をみ込んだ。
本が古い図を見て、へ続くの逃げを示した。だがその通りにを削ると、弥助たちが育てた芋の畑の端を通る。の男たちは誰に許しを取ればよいかと顔を見わせた。槻が「非常だ。しぐらいは仕方ない」と言うと、弥助は嚢を面へ置いた。「しぐらいと言うのは、潰されないほうのの言葉だ」
槻は言い返しかけたが、本が先にをいた。「ここへを入れるなら、承していると承していないを分けていておきます。
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で困るのは民です」。に許しを求める続きは、を止めることはできない。それでも誰かが勝に決めたと言われないための、今できる最限の備えだった。
信は弥助の話を最まで聞いた。芋はの糧になる。田より収穫がないからといって、失っていいわけではない。しばらく話しった末、弥助は畑の隅の細い通だけ掘ることを認めた。ただし今夜のが収まったら埋め戻し、失われたと作物の分は、で伝って戻すことが条件だった。本は会として記録した。
弥助の娘のよしは、父が承したと聞くと納から芋を運びした。まだ掘り残している分はががるまで待つしかないが、収穫できた物だけでも守りたい。佐代が伝おうとすると、よしは「あなたの田を守るためだと言われるのが嫌なんです」とこぼした。佐代は謝りかけて、言葉を止めた。誰かの田を守るためではなく、こので来も暮らせるようにする仕事だと、で示さなければならなかった。
午、皆でを掘り、しずつを逃がした。の支えも取り付けられ、夕方には流れが落ち着いたように見えた。徳兵は疲れ切ったを膝へ置き、信へ「今はよく話を聞いたな」と言った。父の褒め言葉は珍しかったが、信は素直にべなかった。
弥助の畑に流れたの跡が、暗くなるにつれて広がっていたからだ。
夜、にまた激しいが来た。信は眠れず、ひとり堤へた。掘ったばかりの溝にさな枝が詰まり、が別の方向へあふれかけている。誰も見ていなければ、昼決めたのは簡単に変わってしまう。「決めたから終わりじゃないんだな」と呟いた、流から懐灯のがづいた。本だった。彼も同じことを配して巡回していた。
が枝を取り除いていると、暗での折れる音がした。仮の支えの本が、流にぶつかってれたのである。本は信の肩を掴み、危険な縁から引き戻した。次の瞬、板がし傾き、の勢いが変わった。朝までこのままにしてよいとは、もう誰にも言えなかった。