"消えた十一丁の鍬" 第4話
のさを量る
槻は翌、の公会堂へ農の代表を集めた。集められた物を運ぶ業者の田も来ていた。田は古い秤を持ち込み、鉄なら何でもさにして受け取るようなぶりで話した。く台分をまとめれば、次の便を待たずに済む。青団の健はうなずき、「使わない農具も昔の釘も、ここへ持ってこい」と声で呼び掛けた。
「使わないと誰が決めるんですか」。信がを挟むと、田は肩をすくめた。「俺はで決まった物を引き取るだけだ。畑のことまではらん」。しかしその無責任な言こそが、信には恐ろしかった。で働くがりない農婦たちにとって、鍬の本は来の収穫に直結する。さの数字だけで片づけられてたまるものか。
信は調べた丁の内訳を板にいた。すぐ使える丁は返したこと、丁は修理が必なこと、残り丁は刃の部を再利用できるかもしれないことを説した。「用品として確かめられた物は集めます。ただ、畑で使っている物を制に奪う話にはしないでください」。本も同席し、「回収の指定品目か、任に提する物かを混同してはいけない」と補った。
そので、佐代がちがった。「私は回収を嫌がっているんじゃありません。でも男も牛も借りられない今、鍬を取りげられたら何を持って畑へけばいいんです」
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。その声に、ろの方にいた女たちも次々とうなずいた。槻はひとりの顔を眺め、ようやく「使える農具をそのまま載せるのは待とう」と答えた。ただし、代わりの物を期限までに集める条件をつけた。
そのには父をくしたばかりのもいた。にある古い鉄鍋をせばよいのかと尋ねると、本は「毎使っているなら無理にす話ではない」と答えた。槻は数字がなかなか増えないことに苛ったが、のが鍋の取っを握りしめるのを見て、声を落とした。寄に集まった々が同じ程度に物を持っているわけではない。くせると、つ失えば夕飯に困るがあることを、回収のさだけでは区別できなかった。
信はそのを収めたつもりだった。へ戻り、修理の順を並べ替えた。先に沿いの畑で使うい鍬、その次にの段畑の広い刃。のうちに終えられるよう、炉のを無駄にしない順序を考えた。徳兵がうなずいたのを見て、父もしは自分の方法を認めたのだとった。
しかしお勢は浮かない顔をしていた。「お父さんが納へ入ると、いつも裏の戸を閉めるの。信には見せたくない仕事があるみたい」。信が父に問いただすと、徳兵は「鍛冶がを使って何が悪い」と言い返した。
話を続けるうち、父のの首が赤く腫れているのが見えた。夜まででい鉄を打てば、を痛めるのも無理はない。
「俺を伝わせてくれ。なら丁もく直せる」。信の言葉に、父はに背を向けた。「その仕事は、もうおには伝わせられん」。まるで丁の鍬ではない、別の何かのことを言っているようだった。信はまた争う気になれず、に積まれた古鉄を量りにった。
夜半、がを通り過ぎた。根を叩くの音ので、鍛冶の槌だけが途切れずに続いた。翌朝、信が修理札を揃えていると、納の鍵がいていた。最初に目に入ったのは、に並ぶいの柄だった。柄は本あるのに、そこにつくはずの鉄の刃が本も見当たらなかった。