"高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった" 第17話
沼の同棲と憎悪の連鎖
京都区の線沿い。 が通過するたびにガタガタと窓ガラスが激しく震える、畳の呂なしアパート。 の当たる湿ったタタミので、麻里奈と秀のしい「結婚活」は、初から獄の様相を呈していた。
「おい! 飯はまだなのかよ!」 古びたランニングシャツ姿の秀が、万のから鳴り散らした。 再就職先が見つからず、雇いの警備員のバイトでいつなぐ秀の体からは、酒と汗の饐えた匂いが漂っている。
台所の流し台で、半額の見切り品のうどんを茹でていた麻里奈が、目を吊りげて振り返った。 「何よ、偉そうに! あんたが持ってきたなんて、パチンコ代で半分消えてるじゃない! 今の賃、あと万円りないのよ! どうすんのよ!」
「うるさい! 誰のせいで俺が会社をクビになったとってんだ! おが『妹には子供ができないから都がいい』なんて唆さなきゃ、俺は今でも商社の課候補だったんだぞ!」 「あんたが勝に乗っかってきたんでしょうが! 私のせいにするんじゃないわよ! を取られた私の苦しみが、あんたに分かんの!?」
かつて「運命の」だと信じ込んでいた関係は、を失い、社会位を失った途端、互いを罵倒しうだけの醜悪な沼へと変わり果てていた。
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麻里奈の元にも、裁判所から命じられた私への慰謝料百万円の支払い命令がくのしかかっていた。 昼はファミレスの皿洗い、夜は末のスナックで客に酒を注ぐ々。 かつてに纏っていたブランド物のや宝はすべて質に消え、爪は割れ、髪はパサパサに傷んでいた。
「あいつ……美のやつ……」 夜、焼酎を煽りながら、麻里奈はスマートフォンの画面を睨みつけていた。 実の族LINEから完全にブロックされ、娘の写真枚すらに入らない現実。 自分が捨てたはずの娘が、今や妹のをに受けて健やかに育っているという事実が、麻里奈のプライドを内側から狂おしいほどに苛んでいた。
「私のをめちゃくちゃにしやがって……! 絶対に許さない……!」 怨嗟の声を漏らす麻里奈の背に、酔っ払った秀が投げつけた空き缶が直撃した。 「うるせえぞ、く気消して寝ろ! も朝から現なんだよ!」
も温もりもない、ただ憎悪と悔だけが澱のように溜まる畳半。 が選んだ楽の代償は、永にけることのない暗となって、彼らの首を絞め続けていた。