"高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった" 第10話
の箱と喪の広
翌、午。 夕が迫る実の仏には、苦しい沈黙と、線の独特のりがち込めていた。
部の央には、無の布で覆われたさな台座が据えられ、そのには純のさな骨壷と、々に囲まれたちゃんの遺――かの頃の、満面の笑みを浮かべた写真が飾られていた。 位牌のに座るのは、漆黒の喪にを包んだ私、そして般若のような厳しい表を浮かべた父と母。 部の隅には、腕を組んだ滝弁護士が、鋭いをらせて控えていた。
ガラガラガラッ!!
玄関の引き戸が、壊れんばかりの勢いで乱暴に引きけられた。 ドタドタと廊を駆け抜けてくる音。 「ッ! ぉぉぉッ!!」
仏の襖がにねばされ、び込んできたのは、乱れた髪を振り乱し、化粧の剥がれ落ちた顔を涙とでぐしゃぐしゃにした姉・麻里奈だった。 そのろには、スーツケースを引きずり、青ざめた顔でち尽くす夫・秀の姿があった。 は着の着のまま、成田空港からタクシーをばして直してきたのだ。
「……! 嘘でしょ、私の……!」 姉は膝から崩れ落ち、祭壇のにいずり寄った。 の台座にすがりつき、飾られた遺を抱きしめて号泣する。 「ごめんなさい……! ママが悪かったの……! 置いてったりしてごめんなさいぃぃっ!」
秀もまた、ガクガクと膝を震わせながら、私のに崩れ落ちた。 「美……すまない……! 俺は……俺たちは、そんなつもりじゃ……!」
私はちがり、に額を擦り付けて泣き叫ぶ姉と、いつくばる夫を、徹極まりない絶対零度の瞳で見ろした。
「ずいぶんと仲良くお帰りね、おさん。……国のバカンスは、ちゃんの命よりも楽しかったかしら?」
私の静かな言が、通夜のを凍りつかせた。