みかん小説
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"昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇" 第19話

運転席の空

半ば、島交通では型の備がみ、欠便はしずつ減っていった。だが誠が運転席へ戻るはまだ決まっていなかった。会社から示された条件には、事故についての確認と必な指導、再乗務の点検が含まれていた。本は毎朝く勤し、備員の伝いや内清掃をしていたが、乗務員でほかの運転が発する姿を見ると、目を伏せた。

清徳はある、誠を庫の端へ呼んだ。「ハンドルを握るのが怖いか」。誠は首を横に振ろうとして、やめた。「怖いです。今度また違えたらとうと」。清徳は頷いた。「怖くないと言うに、俺は客を乗せてほしくない。だけど怖がるだけでも仕事にならん。何が怖いのか、つずつ言葉にしてみろ」。

は構内にまった型をにして、乗の順を確認した。をめる所、扉をけるの確認、元の状態、周囲のや自転、乗客のき。特別な技術ばかりではない。普段の運転で当たりだとっていたことを、識して言葉にすると途端に難しくなる。誠は何度か途で詰まり、そのたびに清徳は急かさなかった。

「先輩は、もう事故を起こさない自信がありますか」と誠が聞いた。清徳はしばらく黙り、「そんな自信はない」と答えた。「俺も違える。違えそうなに止まり、ほかのの目を借りられるようにしたいとってる」

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。誠は驚いたように顔をげた。の運転は何も怖がらず、を全部っているものだとっていたのかもしれない。

休憩の窓からは、備員が輪の周りを照らしている姿が見えた。以の誠なら、そんな点検を見ても急いでりたい気持ちばかりが先にっただろう。だが今は、確認するを作ってくれたの名を覚えておきたいとった。乗務員の仕事は、運転席のだけで完結していなかった。

清徳はかつて、復帰ののに見通しを誤り、肩へ輪を乗せたことがあった。その、乗客をく送ろうと焦った自分を、先輩の運転が厳しく叱った。「客を乗せているは、おの腕を試すな」。叱られた言葉は今も覚えている。だががたつうちに、自分の腕なら何とかなると考える瞬が増えていた。の朝は、そのいがりも揺さぶった。

事故についての説と再訓練が終わっても、誠が戻るには会社側の判断を待たなければならなかった。その、若い運転の妻が営業所を訪ねてきた。まれたばかりの子どもを抱え、活がどうなるのか配していた。清徳は夫妻と向かいい、「戻れると決まっている」とは言わなかった。誠が背負った責任は消えない。それでも必な説や続きから逃げずにいることが、次の仕事へつながるだとっていた。

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その夕方、会社から乗務員全体へしい確認順が配られた。異常を発見したら運転だけに判断を背負わせず、配担当と備員が確認し、必なら運を止めて代替段を検討する。清徳はを読みながら、これがもっとくあればとった。だがを作っただけでは何も変わらない。誰かが急いでいるにこそ、この順を守れるかどうかだった。

誠は用を丁寧に折り、胸のポケットへ入れた。清徳が「読んだら捨ててもいいぞ」と冗談を言うと、誠はし笑った。「しばらく持っておきます」。のを、午の便を終えた型バスが静かに庫へ入ってきた。誠はその体をく見つめていた。いつか再び運転席へ戻るがあるとしても、の朝に戻ることはできない。そのことを、彼はようやく受け止め始めていた。

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