"昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇" 第10話
もうつの発刻
午零半、島交通の事務所では弁当をく者がほとんどいなかった。朝から遅れた便をどう戻すか、刻表には赤い訂正が増える方だった。苗は休憩するよう何度も言われたが、代わりに話を取れる者がりない。「がかなくても、問いわせは止まりませんから」。彼女はそう言って、ぬるくなった茶をんだ。
清徳は丘線の乗客を運ぶため、会社の保する型の空きを組み直す案を持ち込んだ。へ直する便を本まとめ、その代わり宅の奥には型ではなく別の線から回ってくる型を向かわせる。無理な回送で速度をげるのではなく、待ちを公表して客が無駄に端にたずに済むようにする。運転たちからは、「そんなことをしたら毎の運が崩れる」という反対がた。
「きょうだけのことだから、いつも通りに戻そうとうんです」と清徳は答えた。「でも、きょうの違いを放っておいたら、も同じになります」。は運表を見つめ、鉛の先で机を叩いた。清徳の提案で丘線を再すれば別の便を減らさなければならず、利用者の苦も増える。何もしなければ、会社は『〇のに全を犠牲にした会社』として覚えられる。はそのつを秤にかけていた。
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決定を待つ、構内の備員も、休むを惜しんで働いていた。方向指示器の具が見つかった型の周りには具が並び、若い備員が汗を拭いながら配線を確かめている。「昨の夜、直ったつもりだったんです」と彼は言った。清徳は首を振った。「直ったつもりでされたら、こちらも困る。確認できるまで待つから、頼むよ」。その言葉を聞いて、備員はさくをげた。
清徳は誠が休憩にいると聞いて訪ねた。誠はを向いたまま昼にをつけていなかった。「俺は運転を続けていいんでしょうか」。清徳は易に励まさなかった。「それを決めるのは俺だけじゃない。ただ、続けたいなら今のことを覚えておけ。忘れたふりをしたら、次にを乗せるも怖いままだ」。
誠はしばらくして顔をげた。「先輩は、どうしてあんなにはっきり断れたんですか」。清徳は考え込んだ。を取り、仕事を失うことへの恐れが若い頃よりさくなったのかもしれない。しかし今朝、自分が断っただけでは事故は止まらなかった。清徳はその事実を忘れたくなかった。「断るだけじゃりなかった。次のにも断れるようにしなきゃいけなかったんだ」。
苗が休憩へ入ってきた。丘線の部について、交通管理の担当者と全な所を確認したうえで臨の乗方法を案内できる見通しがったという。
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型も台、午から調できそうだった。ただし正式な連絡が届くまでは発できない。清徳は計を見た。もう昼を過ぎている。それでも今度は、刻に追われるだけでをしたくはなかった。
彼は苗に頼み、営業所の入へしい案内板をてた。『丘線は両と留所を確認です。ご用の方はき先をおらせください』。きな文字でいたは簡素で、式典のポスターのように美しくはなかった。けれど目のにいるへ、今何が起きているのかを伝える言葉だった。
午すぎ、が事務所の扉をけた。「垣、案は採る。ただしおにも、今朝の判断をつずついてもらう」。清徳は頷いた。「私の判断も、違っていたところは直します」。は何か言いかけたが、やめた。互いに譲れないところは残っていた。それでも、枚の刻表を挟んで話せるところまで戻ってきた。