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"昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇" 第5話

ていった号

「さん、旧型を営業に使えば、事故が起きたに取り返しがつきません」

清徳がそう言うと、は机の引きしから運表を取りした。そこには赤鉛でしい経がき加えられている。「側の臨便として回だけ回す。乗りりは広い空きでさせる。宅の細いは通らない」。清徳は図を覗き込み、すぐに丘丁目の曲がり角を見つけた。そこは平から注を受けた所のくである。

「そこは駄目です。留所の元もまだ確認が終わっていない」

「元を使わなければいい。客が待っているのを見ただろう」

は机を叩き、今ばかりは見を変えなかった。元来、彼は無理を押し通すではなかった。台のに運転を止め、乗客から何度も叱られたこともある。それだけに清徳は、今朝のの焦りの根がいのだとじた。会社はにわせて型を揃えたが、最の数台の備が予定より遅れ、営業所には欠便がなる危険があった。

清徳は、そので旧型の鍵を預かるよう求めた。は拒んだ。「おが乗らんなら、に乗せる」。誠は顔を伏せ、苗はのでを握りしめた。運を命じられるの誠に、単純に『断れ』とは言えない。断れば仕事を失うかもしれず、乗れば誰かを危険にさらすかもしれないのだ。

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清徳は誠を構内へ連れした。くのから警笛が聞こえた。「俺が嫌だからおに押し付けるのは違う。会社に申し入れるなら緒にする」。誠は首を振った。「うちにはまれたばかりの子がいます。まだ正社員になって半です」。清徳は言葉を失った。正しい判断をする力と、正しい判断を押し通せるは同じではない。

分、借りる予定の型が故障渋滞でけなくなったという連絡が入った。待所では乗客の部が歩いて発し、何かは族へ話をかけた。清徳は急ぎのの移方法を探すため、所の認されたタクシー営業所にも連絡していた。だが全員を運べるだけの台数はない。はこの連絡を聞くと、誠にく命じた。「号をせ」

苗が配台帳へ向かったには、旧型の鍵が既に抜き取られていた。構内でエンジン音が響き、庫の奥から号がきした。乗客は乗せていない。まず丘の臨点へき、そこで待つを拾う計画なのだという。清徳はまでったが、誠の運転する号は通りへてしまった。

「、戻れ!」

声はエンジン音に消された。側に乗のある古い体が、しい側通の列へゆっくり入っていく。清徳は追おうとしてを止めた。別ので追跡すれば、それもまた混乱したにを増やすだけだ。

苗へ話の準備を頼み、警察と配主任の司へ連絡するよう伝えた。

午分。営業所の話が鳴った。苗が受話器を取ると、相の声が気にきくなった。「丘丁目です! バスが止まったんですが、扉のに子どもがいて……」。苗の顔から血の気が引く。清徳が受話器を受け取ると、話の男は息を切らして続けた。

「子どもが、へ落ちました。けないんです」

清徳は受話器を握ったまま、しばらく何も言えなかった。今朝、自分が発を拒んだ理由が、くれた坂ので現実になってしまったのだ。しかも号の運転席にいるのは、清徳が面倒を見てきた若い運転だった。

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