"赤ペンで消した夫" 第16話
広尾の空と、解かれた結び目
。がクリスマスに染まる、子は広尾のマンションの引き渡しを終えた。 具のすべてが運びされたリビングは、驚くほど広々としており、の午特の澄み切った陽がフローリング面に差し込んでいた。
「黒沢さん、鍵の受領を確認いたしました。い、綺麗にお使いいただきありがとうございました」 産仲介の担当者が々とをげる。 子は「お世話になりました」と穏やかに礼を述べ、真しいエントランスをにした。
売却益から子の正当な持ち分が回収され、彼女の個座には、自して数は余裕を持って暮らせるだけの資が確保されていた。 慰謝料の千万円も、也の退職見込み額と預から確実に回収された。 銭な清算は、分の隙もなく完したのだ。
コートのポケットに両を入れ、子は並をゆっくりと歩いた。 見げる空は抜けるように青く、たいが頬を撫でていく。 議なほど、胸の奥には何の痛痒も残っていなかった。 りも、みも、しみすらも、すべて正の赤字とともに削ぎ落とされ、跡形もなく消えっていた。
の結婚活。 それは、のいた欺瞞だらけの編説に、無理やり付きわされていたようなだった。
也という男の傲さを支え、彼の歪んだ自己の犠牲になりかけていた々。 だが、その悪は終わったのだ。 自らので赤ペンを振るい、すべての誤りを正したことで、彼女は自らの物語の主公へと返り咲いた。
子はタクシーを拾い、あらかじめ決めていたしい活の拠点へと向かった。 向かう先は、港区の洗練された級宅ではない。 京の部、古い寺社とが織りなす、歴史との――台区・だった。