"赤ペンで消した夫" 第12話
の倫理委員会
翌週の曜の午。版本社タワーの最階、普段は役員会しか使用しない特別会議は、の張り詰めた空気で満たされていた。 マホガニーのテーブルの奥には、専務取締役をはじめとする名の役、そして法務部監査の相楽が並んで腰をろしている。元には、子が提した告発報告が何冊も製本され、気なほどのみをもって置かれていた。
「黒沢也君。本委員会が招集された理由は、すでに通達の通りだ」 専務の乾いた声が、静まり返った部に響いた。 テーブルの端のパイプ子に座らされていた也は、晩で別のように老け込んでいた。無精髭が顎を青く覆い、仕ての良いスーツは皺だらけで、ネクタイは斜めに緩んでいる。かつて編集部で部たちを顎で指図していた傲な男の面は、微もなかった。
「専務、お待ちください……! これは悪質な捏造です!」 也は乾ききった唇から泡をばし、必にを乗りした。 「僕を失脚させようとする何者かの罠です! 朝倉希は確かに才能あるですが、僕は編集として表現の助言を与えただけに過ぎません! 代などという正は切に覚えがありません!」
「ほう。助言、ですか」 相楽監査がややかに鏡のブリッジを押しげ、元のリモコンを操作した。
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背の型モニターに、巨なテキスト比較画面が映しされる。 側には朝倉希の応募原稿『の氷解』。側には、子が資料で発掘した、の也自の落選処女作『の残』。
「主公のいち、台設定、伏線の張り方に至るまで、全体の割が完全に致しています。さらに、この赤くハイライトされた文章を見なさい。『このままに呑まれて、世界からだけで消えてしまおうか』。句読点の打ち方、仮名のき方、倒置法の癖……すべてがにあなたがいた文章の完全なコピーだ」
也の顔から、完全に血の気が引いた。喉仏が激しくし、言葉が喉の奥で詰まる。 「そ、それは……無識に響を……」
「さらにこれを見たまえ」 相楽は髪を入れずに次のスライドを表示させた。 社内共サーバーの層から抽された、秒単位の更ログと、非公メッセージのやり取り。 『僕が完璧な形に仕げておくから、君は僕の言葉を自分のものとして語ればいい。今夜またあの所で会おう』――也のアカウントから送信された、決定な欲の言葉が、拡されてのに晒されていた。
「業務内の私利用、さらには会社のコーポレートカードを用いた軽井沢の級スイートルーム宿泊、費計万円の正横領。……黒沢編集。
これらすべてが、あなた自が会社の端末から直接入力し、決済したかぬ証拠です」
逃げのない、完璧な包囲網。 也は机にをつき、脂汗をポタポタと類のに落としながら、力なく首を振るしかなかった。 誰がここまでの証拠を揃えたのか。 部の正者であり、かつて編集部のシステム運用を熟していた妻――子の徹な線が、モニターの奥から自分を見ろしているような錯覚に襲われ、也は全を激しい悪寒に震わせた。