"赤ペンで消した夫" 第11話
締めされたエリート
午分。 子のむ級マンションのエントランスで、狂乱のドラマが繰り広げられていた。 京駅からタクシーをばしてきた也は、ネクタイを曲げ、髪を振り乱した無惨な姿で、オートロックの操作盤のにち尽くしていた。
「けてくれ! 子、頼むからけてくれ!!」 インターホンのマイクに向かって、也が喚き散らす。 だが、スピーカーからは何の応答もない。 自らの鍵を差し込んでも、シリンダーは虚しく空回りするだけだった。 管理が怪訝な顔で警備からてくると、也は慌てて顔を伏せ、逃げるように非常階段を駆けがった。
階の自の。 内廊のたいタイルのに、つの段ボール箱が積みげられていた。 箱の側面には、子の几帳面な文字で『黒沢也氏私物』とかれたが貼られている。 そしてそのに、透なクリアファイルに入った、通の類が置かれていた。
――【婚協議】。
也は震えるでその類を掴んだ。 記載されていた条件は、酷極まりないものだった。 マンションの所権の完全放棄。 貞為に伴う慰謝料、千万円の即支払い。 さらには、也が個に蓄えていた投資信託の解約による、財産分与の満額請求。
「う……あ……あああ……っ!」 也はそのに頽れ、にを打ち付けた。
彼のスマートフォンは、今や社内の役員、部、そしてり狂った朝倉希からの着信通で、赤く点滅を繰り返していた。 編集としての栄、積みげてきた社会位、の甘美な肉体――そのすべてが、わずかの留守のに、砂ののように跡形もなく崩壊していた。
扉の向こう、静まり返った部ので、子は静かにいほうじ茶を啜っていた。 彼女の線は、すでに過の男ではなく、机のに広げられた「自分自のしい仕事」へと向けられていた。 自したのプロフェッショナルとして、自らので歩みすための、しい物語が始まろうとしていた。