みかん小説
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"赤ペンで消した夫" 第10話

凍結された世界

『……え?』 幹線のデッキの反響音ので、也の呆けたような声が返ってきた。 『子……? 今、何て言ったんだい? 波が悪くて、よく聞こえなかったんだが……』

「言葉通りのよ、也さん」 子の声は、氷点の吹のように研ぎ澄まされ、切のを交えずに鼓膜を刺し貫いた。 「あなたには、もう帰るはありません。この部の鍵はすべて交換しました。あなたの荷物も、すべて段ボールに詰めて玄関のにしてあります」

『は……!? な、何を言っているんだ子! 冗談だろう!? 疲れているのか? 僕がも留守にしたから、拗ねているのかい?』 狼狽し、で取り繕おうとする夫の息遣い。

「拗ねている? 私が?」 子はく、く笑った。 「あなたのスマートフォンに、たった今、版の法務部と事部から緊急の通が届いているはずよ。通話を切って、メールを確認したらどうかしら」

『ほ、法務部……? 事部だと……!?』 話の向こうで、カチカチと画面を操作する音が響く。 そして――。

ヒュッ、と喉の奥が引き攣るような、凄まじい息を呑む音が受話器から漏れ聞こえた。 「あ……あ……嘘だ……な、なんだこれ……!? 職務止……!? 業務横領に関する懲戒委員会の招集通……!? そ、それに、賞エントリーの取り消し……!?」

也の鳴のような絶叫が、デッキに霊した。 「な、なんで……どうして法務部がこのことを……! 軽井沢の領収まで添付されている……!? お、まさか……おがやったのか、子ッ!?」

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「ええ、私がすべて通報したわ」 子は淡々と、事務連絡を読みげるように告げた。 「あなたの代ログ、会社の共システムを悪用した通信履歴、経費の正流用、そして――あなたがにいた落選原稿のデータまで、すべて監査へ提しました」

『ば、馬鹿な! お、僕を破滅させる気か!? 僕が失脚したら、このの活はどうなる! 君だって編集の妻というを失うんだぞ!!』

「編集の妻?」 子の笑が、男の最の虚栄を々に打ち砕いた。 「そんなに塗れた肩き、最初から欲しくもなかったわ。私は正者よ。あなたのいた欺瞞だらけのという原稿に、最の赤字を入れてあげたの。……さようなら、也さん。度と私の界に入らないで」

プチッ。 子は容赦なく通話を切断し、也の番号を即座に着信拒否リストへと登録した。 部のには、完全な平穏が満ちていた。 くで、のが窓ガラスを揺らす音が、かすかに響いていた。

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