"産後七日目の決別" 第5話
仕組まれた堀と暴かれたカルテ
予は、最悪の形でした。
分の面会劇から数、直から『急な仕事が入ったため、今週末の面会はキャンセルする』という事務な連絡が入った。そしてその翌週、さらに信じがたい提案が届いた。
『曜は勤になったから、俺の代わりに母さんをかせる。孫に会わせろ』
真帆は即座に『面会は直さんが父親としての関係を築くためのものです。代理はお断りします。あなたが来られるに延期してください』と毅然と返信した。
すると、そのの夕方、直の親族である母方の叔母から、真帆の携帯話に着信が入った。
『真帆さん、千鶴(ちづる)さんから聞いたわよ。あなた、産のホルモンバランスでおかしくなって、赤ちゃんを連れて勝に実にてこもってるんですって?』
叔母の声には、親族としての体裁を装いながらも、確な非難が込められていた。
『直君、に激痩せしちゃって……。休に会いにっても払いで、千鶴さんが代わりに顔を見にこうとしたらそれも拒否されたって泣いてたわよ。母親なら、もうし夫をてて、になりなさいよ』
真帆は背筋が凍りつくのをじた。
義母の千鶴と直は、親族や元の友たちに対し、驚くべきストーリーを触れ回っていたのだ。
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「妻が産うつでになり、実へ勝にした」 「夫が何度会いにっても子供に会わせてもらえず、義母の面会すら酷に拒絶している」
自らが「産んだが育てればいい」と言い放ち、育児指導を拒絶した事実も、わずか分で娘を放りした事実もすべて隠蔽し、真帆を「ヒステリックで勝な悪妻」、自分たちを「子供を奪われた劇の被害者」に仕てげていたのだ。
叔母の話を「ご配をおかけして申し訳ありません」と静に切った、真帆は震えるでスマートフォンを握りしめた。
悔しくてたまらなかった。今すぐ義母に話をかけ、「あなたの息子が何をしたか全部ばらしてやる!」と鳴り散らしたい衝が渦巻いた。
しかし、真帆は踏みとどまった。
に喚き散らせば、「ほら見ろ、やっぱり産で気が狂っている」と相の筋きを補するだけだ。この狡猾な親子に対抗するために必なのは、の涙ではなく、誰も覆すことのできない「客観な事実と証拠」だけだ。
真帆は、産ケア施設を退所する際に黒田助産師がそっと渡してくれた、枚の名刺を取りした。
『ゆり法律事務所 弁護士・杉博文』
翌週、真帆は母につむぎを預け、法律事務所のドアを叩いた。
担当の杉弁護士は、穏やかな代半ばの男性だった。
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真帆が持参したメモをもとに、これまでの経緯——直の暴言、育児放棄、面会の経緯、親族からの嫌がらせ——を淡々と聞き終えると、杉はノートに太いペンでつの円を描いた。
「さん、まずのを理しましょう。夫婦の婚姻関係、お子さんの養育費、そして面会交流。これらは法律、すべて別個の問題です。でこれらをつに混ぜて争うと、相の沼のペースに巻き込まれます」
杉は鏡を押しげ、鋭い線を向けた。
「相方は『面会を拒絶されているな父親』を演じることで、世体と調での主導権を握ろうとしています。これを打ち砕くには、つの力な武器が必です。つは、あなたから継続に面会を提案していた通信履歴の全示。そしてもうつ——」
杉が机を指先で叩いた。
「ご主が、産ケア施設で確に育児を拒否し、『産んだが育てればいい』と言い放ったその現の、第者による公な記録です。当たりはありますか?」
「……あります」
真帆は息を呑んだ。
助産師の黒田。彼女は医療従事者として、々の母子の状態だけでなく、族の言や退所の経緯を必ずカルテに克に記録しているはずだった。
そので、真帆は再び産ケア施設へと向かった。
応対にてくれた黒田助産師は、真帆の申しを静かに受け止め、院への確認を経て、通の封筒を渡してくれた。
「真帆さん。私たち助産師は、お母さんと赤ちゃんの命を守るために記録をつけています。それは医療記録であると同に、虐待や育児放棄から母子を守るための法な公文でもあります」
震える指で封をけた真帆の目に、カルテの複写に記された徹な活字がび込んできた。
『〇〇 1520分。父親来所。 退所オリエンテーションとして沐浴・調乳・抱腹指導を提案するも、「仕事がある」として拒絶。 母親より術疼痛および育児支援の協力を懇願されるが、父親はい語気にて「産んだが自分で育てればいい」と言。 父親の協力を得ることは困難と判断。母親の著しい精神ショックおよび帝王切術の体消耗を考慮し、退所先を自宅から実へと緊急避難に変更措置をとる。 担当助産師:黒田』
活字となった記録を目にした瞬、真帆の目から粒の涙がこぼれ落ちた。
自分の聞き違いではなかった。げさに騒いだわけでもなかった。
あの、あの病で起きた悪は、国資格を持つ第者のによって、消すことのできない「医療の記録」として刻みつけられていたのだ。
だが、杉弁護士による調査は、これだけにとどまらなかった。
庭裁判所での調申をに、杉が弁護士会照会(弁護士法第条のに基づく公照会)を通じて直の勤務先の事部へ送った照会状。
数に戻ってきたその回答には、直がこれまで族や親族に語ってきた最の「義名分」を根底から砕する、戦慄の事実が記されていた。