"大家だった姑の逆転" 第9話
建物を壊したあとでったこと
から聞いた話では、息子夫婦は相当揉めたらしい。嫁は「そんな古いアパートにおをかけるより、全部壊してを売ったほうがいい」と主張した。自体は悪くなかったので、まとまったならく売れると考えたのだ。
息子も最初は建て替えを検討したようだが、見積もりを見て諦めた。しく賃貸宅を建てるには、元の資だけでは到底りない。融資の相談をするにも、入居者の退がみ、収入が減っている状況では簡単ではなかった。
そこでは、建物を解体して更にすることを選んだ。
解体費用もくはない。息子は自分の貯を取り崩し、りない分を面した。嫁は自分の貯をほとんどさなかったらしい。「元々あなたのの問題でしょう」と言ったという。
ようやく建物がなくなり、は産会社への売却について相談した。
そしてそこで、初めて致命な事実をった。
そのものは、息子のものではなかった。
夫が所していたのは建物であり、については第者との契約に基づいて使用していた。契約内容も、関連類も、アパートの所権を移したに緒に渡してある。
息子は、それすら読んでいなかった。
「を売ることはできません」
そう説された、息子は何度も聞き返したという。
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「でも母からアパートを譲ってもらったんです。全部、俺のものになったはずです」
建物を譲り受けることと、そののを所することは同じではない。
しかもについては、契約終には貸主側へ返す取り決めになっていた。
息子から再び話がかかってきた、私は驚かなかった。
「母さん、が借り物だなんて聞いてない!」
「類にいてあるわよ」
「そんなの普通わからないだろ!」
「わからなければ、確認すればよかったでしょう」
「母さんはってたんだろ?」
「もちろん。私は何、をしてきたとってるの」
息子は息を荒くしていた。
「じゃあ、俺は何のためにあんなをして建物を壊したんだよ」
私は答えなかった。
それは私に聞くことではない。
嫁の声も聞こえた。
「お母さん、最初から私たちが失敗するのを狙ってたんでしょう!」
「違うわ」
「じゃあ、どうして止めなかったんですか!」
「私はもう所者じゃないからよ」
静かにそう言うと、向こうが黙った。
「あなたたちは、私に『てけ』『アパートを譲れ』と言った。そして私が譲ったら、今度は『どうすればいいのか教えろ』『おをせ』と言う。ずいぶん都がいいとわない?」
嫁は何も返さなかった。
私は続けた。
「それに、あなたは私を何て言ったか覚えてる?」
「……」
「暮らしの無職は邪魔。そう言ったわよね」
く、私はその言葉をみ込んで暮らしていた。寝でご飯をべ、台所へくにも許を求めるような気持ちになっていた。
でも、もう違う。
「私はもう邪魔をしないわ。だから、自分たちのことは自分たちで決めなさい」
話を切る直、息子がさな声で「母さん」と呼んだ。
瞬だけ、昔の息子の声に聞こえた。
けれど私は話を戻さなかった。
その、は建物も賃収入も失い、期待していた売却もできなくなった。
元に残ったのは、減った貯と、これから自分たちで用しなければならないまいだけだった。