"大家だった姑の逆転" 第8話
嫁がらなかった「億円」
「……億?」
最初に声をしたのは息子だった。
「母さん、今なんて言った?」
「億円くらいあると言ったの」
もちろん、最初からそんなを持っていたわけではない。夫がくなった、命保険や会社関係の理、残された資産など、私にはある程度まとまったおが残った。ただ私は、それを気に使うことはしなかった。
息子を育てながら活費を抑え、賃貸収入の部を修繕費として残し、余剰分はしずつ運用してきた。派な買い物にも興がなく、も必以に買い替えず、ブランド品を欲しいとったこともない。何も積みねた結果、元の融資産は億円になっていた。
それを聞いた嫁の反応は、予どおりだった。
「そんなにあるなら、どうして彼に渡してないんですか?」
私はわず眉を寄せた。
「どうして渡さなきゃいけないの?」
「だって、お父さんのおなんでしょう?」
「今は私のおよ」
「でも普通、子どもにも相続させますよね?」
どうやら嫁は、夫がくなった点で息子にも莫な財産が渡っていたとっていたらしい。おそらく息子が付きっている頃、また見栄を張ったのだろう。
「彼には円もなかったんですか?」
嫁の問いに、私はし昔をいした。
夫はくなる、きちんと自分のを残していた。
広告
当、私たちは義両親とほぼ交流を絶っていた。義両親は銭への執着がく、息子が幼い頃から「孫なんだから、こっちで預かってもいい」と何度も接触しようとしてきた。
夫はそれを配していた。
「俺に何かあったあと、あのたちが子どもを利用して財産にをつけようとしたら困る。君が管理してくれ」
そう言って、から専へ相談していた。
だから夫の、私は夫のに沿って財産を守った。もちろん息子を育てるための教育費や活費には惜しまず使った。学へみたいと言えば学費をし、資格を取りたいと言えば応援した。それでも息子自の活は、自分で働いて築いてほしいと考えていた。
息子も若い頃は、それを理解していたはずだ。
「母さんに楽させたいから」
初任をもらった、そう言って事へ連れてってくれたのことを覚えている。
それが、いつから変わってしまったのだろう。
「お母さん、億あるなら建て替え費用くらい簡単にせるじゃないですか!」
嫁の声で現実に戻った。
「せるかどうかと、すかどうかは別でしょう」
「族なのに?」
「私があなたにを追いされた、族だからここにいてくださいとは言わなかったわよね」
嫁は黙った。
「あなたは『暮らしの無職は邪魔だ』『介護施設へけ』と言った。
広告
それで私はてきた。息子もあなたの方をして、アパートを欲しいと言った。だから譲った。それで分じゃない?」
「そんな……」
「それに、このおにはもう使いがあるの」
私は今んでいるマンションの窓からを見た。
このまいは決してくなかった。入居にはまとまった費用が必だったし、して老を過ごすためのサービスもある。以の私なら、自分のためにきなおを使うことに罪悪を覚えただろう。
けれど今は違う。
「私は自分のおを、自分の老のために使うことにしたの」
嫁が何か言おうとした、私は話を切った。
そのの夕方、久しぶりに所を散歩した。沿いのには犬を連れた夫婦や、ゆっくり歩く齢者の姿があった。私は自分ので好きな方向へ歩けることが、こんなにも自由なのかとった。
ところが息子夫婦の問題は、シロアリだけでは終わらなかった。
は費用を捻するため、ある計画をてた。
「建物を壊して、を売ればになる」
そう考えたのである。
その計画が、もっときな勘違いのに成りっているともらずに。