"大家だった姑の逆転" 第7話
「母さん! このアパート、建て替えだってどういうことだよ!」
「母さん! どういうことなんだよ!」
話にた瞬、息子の鳴り声がにび込んできた。
私はし携帯話をからした。
「何が?」
「何がじゃないよ! 管理会社から聞いたんだ。シロアリの被害がひどくて、このまま使い続けるのは難しいって。建て替えるか、解体するか考えないといけないって言われたんだぞ!」
私は窓のを見ながら、さく息を吐いた。
「やっぱり、その話が来たのね」
「やっぱりって……ってたのか?」
「っていたわよ。数かに点検したんだから」
話の向こうで息子が絶句した。
「なんで言わなかったんだよ!」
「言おうとしたわ。でもあなた、毎遅かったでしょう。それに私がアパートの話をしようとするたび、奥さんから『疲れているから今度にしてください』って止められたのよ」
「それでも――」
「それに、点検報告は全部、あなたに渡したファイルのに入っているわ」
沈黙が落ちた。
私は続けた。
「所者になるなら、自分が何を受け取るのか確認するのは当然でしょう? あなたは度でも類を読んだ?」
返事はなかった。
代わりに話の向こうから、嫁の声が聞こえた。
「そんなの聞いてない!」
どうやらスピーカーに切り替えたらしい。
「お母さん、わざとでしょう! 壊れかけたアパートを私たちに押しつけたんでしょう!」
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「欲しいと言ったのはあなたたちよ」
私は静かに答えた。
「私は最初、譲るなんて言も言っていなかった。それどころか、あなたからてけと言われたの。息子からも施設を探すから名義を譲ってほしいと言われた。だから希望どおりにしただけよ」
「でも建て替えなんて何千万円かかるかわからないじゃない!」
「そうね」
「賃収入だってなくなるじゃない!」
「入居者は順番に退しているもの」
「え?」
嫁の声が裏返った。
私は、退する入居者にはすでに事を説してあること、引っ越し費用もこちらで負担していたことを伝えた。息子夫婦のむ部以は、いうちにほとんど空になる予定だった。
話の向こうで、が何か言い争っている。
「お、賃がずっと入るって言っただろ!」
「あなたがになれば泰だって言ったからでしょう!」
「俺だってらなかったんだよ!」
聞いているうちに、私は議な気持ちになった。
ほんのしまで、私はあの部で息を潜め、嫁の顔をうかがっていた。それなのに今は、の見える自分の部でコーヒーをみながら、の声を聞いている。
「母さん」
息子の声が急にくなった。
「しでいいから、おをしてくれないか」
予していた言葉だった。
「建て替えにしろ解体にしろ、俺たちだけじゃ無理なんだ。
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母さん、賃収入ずっと受け取ってたんだろ? 貯くらいあるよな?」
私はしばらく黙った。
すると嫁がすぐ割り込んできた。
「そうですよ。全部せとは言いません。し援助してくれればいいんです。だって元々、お父さんが残した財産でしょう?」
私は笑いそうになった。
嫁はまだわかっていなかった。
アパートのことだけではない。
夫が私に残したものが、いったいどれだけあるのか。
そしてそれを私が、この何でどうしてきたのか。
「援助はしないわ」
私が答えると、とも黙った。
「どうしてだよ」
「もうそのアパートはあなたのものでしょう。建て替えるのも、解体するのも、所者であるあなたが決めることよ」
「でも母さんにはが――」
「あるわよ」
わず息子が黙る。
私は初めて、これまで息子にも詳しく話してこなかった数字をにした。
「私の貯、今は億円くらいあるから」
話の向こうから音が消えた。