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"大家だった姑の逆転" 第6話

私は約束どおり、アパートを譲った

翌朝になっても、嫁の嫌は驚くほど良かった。昨まで私が台所へ入るだけで眉をひそめていたのに、「お母さん、コーヒーみます?」と自分から声をかけてきた。息子もどこかほっとした様子で、私が本当に約束を守るのか何度も確認した。

私は淡々と続きをめた。

アパートの所者を息子へ変えるには、当然ながら約束だけでは済まない。必な類をそろえ、専にも確認しながらめた。息子には何度か「渡される類には全部目を通しなさい」と言ったが、「母さんがずっと管理してきたんだから丈夫だろ」と笑うだけだった。

嫁にいたっては、建物の状態などほとんど気にしていなかった。

「これで賃が毎入ってくるんですよね?」

聞くのはそればかりだった。

「入居者がいればね」

私はそう答えた。

「じゃあ、私、働かなくても丈夫かも」

嫁は冗談のつもりなのか笑ったが、私には本音に聞こえた。

実は、この点ですでに何世帯かが退の準備を始めていた。管理会社から通が届いていたはずだが、息子夫婦は自分たちの活しか見ておらず、共部分で引っ越し業者と顔をわせても「最、引っ越すがいね」と話す程度だった。

理由は、数かにった建物点検にあった。

築数がんだアパートでは、以から細かな修繕が増えていた。

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壁、排設備、根。私はそろそろ規模な入れが必だろうと考え、管理会社を通じて詳しく調査してもらっていた。

その、から問題が見つかった。

シロアリだった。

部だけなら補修で済んだかもしれない。ところが調査をめると、像以に広い範囲で被害がんでいることがわかった。建物そのものも古く、部分補修をねるより建て替えを含めて考えたほうがいい、という報告を受けていた。

私は当初、自分で費用をして建て替えるつもりだった。

んでくれた入居者に迷惑をかけるため、事を説し、退するにはこちらの都として引っ越し費用も負担することにした。幸い皆さん理解してくださり、きな揉め事にはならなかった。

息子にも相談しなければとっていた。

けれど息子は昼夜働きづめで、まともに話せるがほとんどなかった。そして私が話そうとするたび、嫁が割って入った。

「彼、疲れてるんです。アパートの細かい話ならにしてください」

「それ、今すぐじゃなくてもいいですよね?」

そう言われ続け、詳しい話をする会を失ったまま、あの夜を迎えたのだった。

もっとも、所者になる以、資料式には建物点検の報告も含まれている。私は隠してはいなかった。息子が度でもファイルをけばわかることだった。

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だがが興を示したのは、毎いくら賃収入が入るかという数字だけだった。

続きが終わると、私は宣言どおりアパートをた。

引っ越し当、息子はし寂しそうな顔をした。

「母さん、本当にありがとう。俺、これから頑張るから」

嫁も隣で々とをげた。

「ありがとうございます。彼と幸せになります」

私は笑顔を作った。

「そう。元気でね」

転居先については詳しく伝えなかった。

私が選んだのは、との両方が見える所に建つ、活支援のったシニア向けのマンションだった。まだ介護は必ないが、将来もしものことがあってもして暮らせる。夫と若い頃、「いつかの見える所でのんびりしたいね」と話していたことをいし、自分で決めた。

しい部へ入り、きな窓をけると、潮の匂いを含んだがカーテンを揺らした。

私は久しぶりに、自分のできく息を吸った。

誰の嫌も気にしなくていい。

好きなに台所へち、好きな所で事をし、好きな番組を見られる。

その夜、私はぶりにリビングで夕をべた。

方、息子夫婦は願だった「活」が始まったとんでいたらしい。

ところが、それからわずか数。

私の携帯話が、ものすごい勢いで鳴った。

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