"夫のいない四日間" 第11話
あふれる仕事部
がけ、柔らかなの陽が京のを包み始めていた。
都内の閑静な宅に建つ、層の分譲マンションの最階。向きのきな窓からよい差しが差し込む斎で、私は真しいウォールナットのデスクに向かい、万をらせていた。
机のには、先見本刷りが届いたばかりの私の刊ハードカバーが誇らしげに置かれている。
『仮面の沈黙』——裏切りと再をテーマにした本格サスペンス説。発売版が決定し、聞の読欄や文芸誌のレビューでも絶賛され、すでに映像化のオファーが複数い込んでいた。
「里美先、最話の初ゲラ、拝見しました! 息もつかせぬ展で、編集部内でも絶賛ですよ!」
スピーカーフォンから響く担当編集者の弾んだ声に、私はふっと微笑んだ。
「ありがとうございます。今回は、今までで番、のさと覚悟を描き切れた気がします」
「先ののキレ、ここ数ヶで本当に凄みを増しましたよね。何か境の変化があったんですか?」
「ええ……切なものを、自分ので守り抜く覚悟が決まったからだといます」
話を終え、淹れたてのハーブティーをに含む。
あの、沖縄へ旅つ博之の背を見送り、空っぽの部の鍵を閉めてから、半以のが流れていた。
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婚調は完全に終し、戸籍謄本からもあの男の名は綺麗に消えった。美の苗字も私の旧姓である「田」へと変更し、学籍の続きもすべて滞りなく完している。
弁護士の田先からは、毎期通りに博之からの返済と養育費が振り込まれている旨の事務連絡が届く。彼が今、どこでどのような過酷な労働にをやつしているのか、私にはる由もないし、る必もない。
ただつ言えるのは、者の尊厳を平然と踏みにじり、汗流して稼いだを盗んで裏切るようなには、相応の因果応報がこの社会の摂理としてされるということだけだ。
「ママ、ただいまー!」
バタバタと廊をる音とともに、リビングのドアが勢いよくいた。
学から帰ってきた美が、黄い通学を放りし、満面の笑みで私の元へとび込んでくる。そのろには、ランドセルを抱えた兄の慶介が、やれやれといった表で笑いながらっていた。
「おかえり、美。お兄ちゃんも、いつも迎えにってくれてありがとう」
「いいってことよ。美ちゃん、今学の図のに描いた絵が、内コンクールで賞獲ったんだぞ」
「本当、美!?」
美は誇らしげに胸を張り、つ切りの画用を私のにきく広げてみせた。
そこには、るい太陽のがり注ぐしい部のベランダで、満の壇をにをつないで笑いう、私と美の姿が鮮やかな絵の具で描かれていた。
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絵のには、クレヨンで力くこうかれていた。
『わたしのすきな、ママとあたらしいおうち』
胸の奥底から、いものが込みげてきた。
私はしゃがみ込み、美のさな、温かい体をぎゅっと抱きしめた。
「すごく……本当に素敵な絵ね、美。ありがとう」
「えへへ。ママ、美ね、今のまいにちがだーいすき!」
娘の屈託のない笑顔が、私の魂を温かく満たしていく。
族というものは、血の繋がりや形式な婚姻届によって守られるのではない。
互いを敬い、慈しみ、相が苦しんでいるに決して背を向けず、そのを取り続ける志によってのみ、保たれるのだ。
その志を放し、自ら裏切りのを選んだ者たちは、たい夜の底へと消えていった。
そして、沼を抜けてを掴み取った私たちは、もう度と振り返ることはない。
窓のには、どこまでもく、青く澄み渡ったの空が広がっていた。私と美のしい物語は、今まさに、希望に満ちた確かな歩を踏みしたばかりだった。