"夫のいない四日間" 第2話
引きしの秘密と見えない盗難
夫の裏切りをってから、週が過ぎていた。
その、私は何わぬ顔で常活を回し続けた。朝に起きて朝を作り、美を学へ送りし、午から夕方までは斎にこもって原稿の執に没する。博之はといえば、私が仕事部に閉じこもっているのをいいことに、昼過ぎになるといそいそとシャワーを浴び、を吹き付けてを繰り返していた。
すぐに婚届を突きつけなかった最の理由は、娘の美のだった。
美は父親である博之を慕っていた。休にたまに気が向いた博之が所の公園へ連れてくだけで、「パパ好き!」と無邪気に抱きつく。歳の子供にとって、父親というがいかにきなを持つか。父親の裏切りによって娘の無垢なを々に砕いてしまうのではないかという恐怖が、私の決断のを鈍らせていたのだ。
しかし、面で集まる証拠は、私の迷いを酷に打ち消していった。
博之の部のクローゼットを掃除していた際、脱ぎ捨てられたジャケットの内ポケットから、さく丸められた数枚の領収がこぼれ落ちた。
座の名百貨にある級ブランドブティックのレシートだった。
『レディスレザーハンドバッグ 万千円』 『シルクスカーフ 万千円』 『ゴールドチェーンネックレス 万千円』
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付はいずれも、博之が「ハローワークにく」と言ってかけたの夕方だった。
それらしき女性物のブランド品は、当然ながらこののどこにもしない。私自、夫からそんな価なプレゼントを受け取ったことなど、婚当初を含めて度たりともなかった。すべて裕子へ買い与えた貢ぎ物であることはだった。
だが、ここで致命な疑問がじる。
(どうして博之に、こんながあるの……?)
無職の博之に私が毎渡している遣いは、昼代と携帯話代を含めて万円だ。退職はに底をつき、彼個の貯用座には数千円しか入っていないことを私はっていた。消費者融にでもをしたのかと瞬の毛がよだったが、元の領収の支払い方法欄には、はっきりと『括決済:クレジットカード』と印字されていた。
真実を確かめるため、私は夫を追跡することを決した。
しかし、半以を空けて尾するためには、学から帰ってくる美の預け先を確保しなければならない。私は所で設計事務所を個経営している実の兄、慶介(けいすけ)に話をかけた。
「お兄ちゃん、急で本当に申し訳ないんだけど、今の午から美を見ていてもらえないかな? どうしてもせない用事があって……」
『用事? 里美、おが平の昼に美を預けるなんて珍しいな。
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いつも打ちわせも買い物も全部で済ませてるだろ。どうしたんだ?』
「え、ええと……今度の連載で使う特殊な取材資料というか、限定の美術全集をどうしても神保町の古に買いにかなきゃいけなくて。美を連れて歩き回るのは変だから」
苦し紛れの嘘だったが、慶介は『まあいいけど、あんまり遅くなるなよ。美が寂しがるからな』とく引き受けてくれた。
午、美を兄の事務所へ送り届けた私は、目にかぶったキャスケットにサングラス、なトレンチコートというでちで、自宅マンションの敷の柱のにを潜めた。
分、紺のブレザーを羽織った博之が、交じりにエントランスから現れた。駅へ向かう取りは軽く、完全に浮きっている。
を乗り継ぎ、博之がりったのは楽町駅だった。座丁目の交差点、級計のショーウィンドウので待っていたのは、のタイトワンピースを着こなした裕子だった。
は周囲の目も憚らずに駆け寄り、自然な作で腕を組んだ。裕子の肩には、先レシートで見かけたあの万千円のブランドバッグが誇らしげに提げられていた。
が並を抜け、吸い込まれるように入っていったのは、資系級ジュエリーブランドの面だった。
私は般客を装って内に入り、しれたサングラスの陳列棚のからの様子を窺った。裕子がショーケースを指差し、甘えるように博之の腕に胸を押し当てる。博之は得満面の笑みを浮かべ、員を呼んでネックレスを試着させていた。
そして、会計カウンターへ向かった博之の仕を目にした瞬、私の全の血液が音をてて逆流した。
博之が財布から抜きし、躊躇なく員に渡した黒いカード。
(嘘でしょ……あれは……私のカード……!?)
界が真っに滅した。
そのクレジットカードは、私が個事業主としての経費精算用、および確定申告の予備として契約していたサブカードだった。メインのカードは常に私の財布に入っているが、サブカードは斎の机の段目の引きし、鍵のかからない類ケースの奥くにしまい込んであったものだ。
ここ数ヶ、私は斎の防音事や特注の執用デスク、型パソコンの導入などで、メインカードの引き落とし額が平均万から百万円くに達していた。サブカードも同じ座から引き落とされる設定になっていたため、私は引き落とし額の異常にまったく気づいていなかったのだ。
妻が夜まで血を吐くようないで原稿用を埋め、稼ぎしたを、無職の夫が盗みし、親友の女にブランド品を買い与えるために湯のように決済していた。
りと屈辱で、全の震えが止まらなかった。
私はスマートフォンのカメラを構え、裕子の首に員がネックレスをかけ、私の名義のカードで博之が堂々とサインする連の決定瞬を、寸分の狂いもなくレンズに収めた。