"義両親をこき使う伯父に、嫁の私が反撃した日" 第13話
無の半と隠された真実
巨な段ボール箱の底から取りされたのは、角が丸く擦り切れた黒い表の業務誌と、背表をガムテープで補された冊の学ノートだった。 表には、義父・隆さんの几帳面な跡で太いマジックインキの文字が躍っていた。 『国男兄貴・ちげ作業記録並びに納メモ』
「……お義父さん、これは何ですか?」 私が尋ねると、義父は古びたの匂いを吸い込みながら、ぽつりぽつりとの記憶を繰り寄せ始めた。
「あの……私が勤め先の倒産で職を失い、典子が倒れて兄貴に百万円を借りた、ちょうど同じ期のことだ。兄貴も勤めていた属加会社から独して、自分のをちげたばかりだったんだよ」
義父の指先が、黄ばんだノートのページをゆっくりとめくっていく。 そこに記されていたのは、息を呑むような過酷な労働の実態だった。 『():午より兄貴のへ。作械台の基礎ボルト打ち込み、配線敷設。終』 『():古旋盤の分解オーバーホール。部品洗浄、芯し作業。終翌午』 『():主取引先への試作品納品ち会い。兄貴に同し技術説。終』
平の清掃会社での過酷な肉体労働を終えたあと、義父は毎週曜と曜の休をすべて投げ打ち、朝から夜まで兄のに通い詰めていたのだ。
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期はおよそ半、数にしてを超えていた。
「当、兄貴は営業はできても、械の据え付けや図面の読み込みといった現作業が全くできなかったんだ。倒産した私の会社で培った技術や、りいの具商へのコネがどうしても必だと言われてね。伝ったんだよ。兄貴がから設備資を借りる際も、私が親戚として連帯保証の印鑑を押して、続きを緒に回った」
健太がを乗りし、い入るようにノートの数字を追った。 「親父……この作業記録の横に、当とか当の記載が切ないけど……いくら貰ってたんだ?」
義父は首を横に振った。 「円も貰っていないよ。無だ」
「はあ!? 無!?」 健太が子を蹴り倒さんばかりに叫んだ。 「半、週末の休みを全部潰して、熟練の技術を提供して、保証にまでなって……ただ働きだったのかよ!?」
「当たりだとっていたんだ」 義父は静かに言った。 「あの、典子の命を救うための百万円を貸してくれたのは兄貴だ。だから、兄貴が困っているに私が自分の技術と体力で支えるのは、弟として当然の恩返しだと……そう信じていたんだよ」
私は胸の奥から込みげるいを抑えきれなかった。 義父は「助けてもらった」という負い目から、自らの労働を銭に換算することすら拒んできたのだ。
しかし、作械の据え付けやオーバーホールを専業者に依頼すれば、百万円単位の費用がかかる。ましてやちげ期のトラブル対応や保証の引き受けまで含めれば、義父が提供した価値は、百万円の融資を遥かに超えていた。
「お義父さん」私はノートを抱きしめるようにして言った。 「これは、方な施しなんかじゃありません。おは、お互いので番苦しかった期を、命がけで支えった対等な兄弟だったんです」
国男伯父さんは、その事実を親戚の誰にもかさず、自分だけが「弟を救った偉な男」として君臨し続けてきたのだ。 義父の目から、筋の涙が頬を伝った。 「……そうか。俺も……兄貴を助けていたんだな」 の呪縛が、音をてて砕け散った瞬だった。