"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第15話
目の施錠
引っ越しのの朝、孝志は「俺と公平で最までやってくる」と言ってをた。
私は自宅に残り、いつも通り掃除をし、洗濯物を畳み、昼を取った。
それなのに、計を見る回数だけが異様にかった。
、あのは法には私のものだった。
固定資産税の通も、修繕の見積もりも、すべて私の元へ来た。
それでも理には、いつしか私がづきにくい所になっていた。
親戚ので「文子さんの」と呼ばれ、私が所者だと言えば空気を壊す。
そんな奇妙な状態が今、ようやく終わる。
夜過ぎ。
孝志が帰ってきた。
「ただいま。終わったよ」
顔には疲労が滲んでいた。
温かいコーヒーを渡すと、彼はゆっくり今のことを話した。
義母は驚くほど静かだったという。
荷物がすべて運びされた、で空になったを確認して回った。
具のなくなったリビングは、以よりずっと広く見えた。
きな卓が置いてあっただけが変わり、い具の脚の跡がく残っていた。
台所では、義母が最にシンクをタオルで丁寧に拭いた。
「母さん、何も言わずにずっと磨いてたよ」
未練だったのか、謝だったのか。
孝志にも分からなかった。
最に義母は、提げ袋から義父の写真を取りした。
空っぽのリビングの央で写真を胸へ抱き、さな声で言った。
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「お父さん、くよ」
返事はない。
義母はそのまま玄関へ向かった。
公平が荷物を持ち、孝志がろからついていった。
玄関のがり框をりる、度だけ体がふらついたが、義母は公平が差ししたを取らず、自分でち直った。
へる。
玄関の扉を閉じる。
そして使ってきた鍵を差し込み、義母自ので回した。
カチリ。
さな属音だった。
それでも孝志には、続いた何かが切れた音に聞こえたという。
鍵を抜いた、義母はまで歩き、そこで度だけ振り返った。
「母さん、丈夫?」
公平が聞いた。
義母はを見げたまま答えた。
「丈夫」
その声は震えていた。
けれど泣かなかった。
誰かに引きずりされたわけでもない。
裁判で追いされたわけでもない。
自分で次のを選び、自分で荷物を捨て、自分ので最の鍵を閉めた。
私はその話を聞きながら、義母に対して議なを覚えた。
りではなかった。
同ともし違った。
ようやくのとして、彼女を見ることができるようになったのだとう。
「彩」
孝志が私を見た。
「い、本当にごめん」
私はし考えてから答えた。
「もう謝らなくていい。でも、忘れないで」
「何を?」
「優しさと、黙って全部認めることは違うってこと」
夫はく頷いた。
ぶりに、あのは空になった。
けれど議なことに。
私のでは、その初めて、本当にが戻ってきた気がした。