"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第11話
「見るだけ」の部
、公平が枚の物件資料を持ってきた。
つ目は広さこそ分だったが、築数が古く、義母は玄関へ入っただけで「こんな狭いところ嫌」と言ったらしい。
つ目は眺めがよかったものの、駅からく、病院へくには坂を歩かなければならなかった。義母は窓からの景を褒めながらも、「ここじゃ病院がいわ」と自分から断った。
公平はそこで気づいたという。
文句ばかり言っているように見えて、義母はすでに「自分がで暮らし続けるには何が必か」を考え始めている。
そしてつ目。
駅から徒歩圏内で、スーパーも病院もい。建物にはエレベーターがあり、玄関から部まで段差はほとんどない。浴にもすりがあり、向きの窓から午の差しが入る。
LDKのこぢんまりした部だった。
今までのの分のほどしかない。
公平によれば、義母はへ入ると、真っ先にきな窓のへ歩いていった。
しばらく黙ってを眺め、そのキッチンのさを確認し、浴のすりを触り、寝からトイレまでの距を確かめた。
「俺、聞いたんです。『ここ、どうだ』って」
「何て答えたんですか?」
「最初は『別に』でした」
公平が笑った。
「でも帰る直、もう度部を見回して、『これくらい狭い方が掃除は楽かもしれないわね』って」
その言葉を聞いた瞬、私は胸の奥がし軽くなった。
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広い庭、きな客、親族を座らせられる卓。
それらは義母を「本の奥様」に見せるためには役った。
しかし歳になった彼女自を助けてくれるものではない。
い廊はになると寒く、急な階段は膝を痛め、広い庭は入れだけでが終わる。
反対に、さなマンションには見栄を張る材料はなかった。
その代わり、かい部と全なと、自分のでける病院とスーパーがある。
「それで?」
孝志がを乗りした。
「晩考えるって」
翌の曜。
昼の途、孝志のスマートフォンが鳴った。
公平からだった。
「母さんが、昨のつ目の部をもう度見たいって」
私は箸を置いた。
孝志が嬉しそうに「俺からも何か言った方がいいか」と聞いてきたが、私は首を横に振った。
「今は何も言わなくていい」
「どうして?」
「自分で決め始めたから」
、義母はのを自分のだとい込むことで自尊を守ってきた。
そのからることは、彼女にとって「負け」を認めることにい。
だからこそ、最だけは誰かに決められてはいけない。
翌週、公平からもう度連絡が来た。
「母さん、あの部に決めるって言いました」
私はその言葉を聞いた、しばらく何も言えなかった。
義母が初めて、自分のためのを自分で選んだ瞬だった。