"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第9話
億円の
週末の午、私と孝志は建物調査の担当者を連れてを訪れた。
玄関に現れた義母は、らない男性がいるのを見るなり顔をしかめた。
「何なの、その」
「建物の状態を確認していただく方です」
「勝にのを調べないでちょうだい」
私は義母をまっすぐ見た。
「私のです」
その言で義母は黙った。
調査は以かかった。、回り、根裏、壁、基礎。義母が々きれいに掃除していること自体は事実だったが、築数による劣化は掃除では止められない。
特に回りの配管と根の部にはきな補修が必で、耐震面でもを入れた方がよいという。
階へがる途、私は義母がすりをく握り、段ずつ慎にを運んでいることに気づいた。
「膝、痛むんですか」
「別に。ちょっと疲れてるだけよ」
がってはいたが、額にはく汗が浮いていた。
公平がマンションを勧めた理由がよく分かった。
調査を終えると、担当者はリビングで結果を説した。
「めないという状態ではありません。ただ、今全にく使うなら、かなりきな事を検討した方がいいでしょう。事内容によっては、に別の所へ移っていただく能性もあります」
義母の顔が変わった。
「ほら! やっぱり!」
突然、私を指した。
「最初から私を追いすつもりだったんでしょう。
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事だ何だって理由をつけて、を売る気なのよ」
「売るとは決めていません」
「嘘よ。最、産がこの辺をうろうろしてるじゃない」
義母はを乗りした。
「億円なんでしょう?」
具体な数字がたことに、孝志も私も瞬黙った。
周辺の価ががり、を含めれば現の評価がかなりくなっていることはっていた。条件によっては億円い査定がつく能性もある。
「そのくらいの評価がる能性はあります」
私が認めると、義母は勝ち誇った。
「やっぱり。おが欲しいから私を追いして売るんじゃない」
「まだ何も決めていません」
「じゃあ私はどこへくのよ」
初めて、義母の声にりではなくが混じった。
私はそれを聞いて、湯呑みを置いた。
「む所をなくすことが目ではありません。必なら、緒に考えます」
義母が目を丸くした。
「でも、誰に譲るかをお義母さんが決めることはできません」
「……」
「売るか、直すか、貸すか。それを決めるのは所者です」
義母は線をへ落とした。
しばらくして、か細い声が聞こえた。
「じゃあ……私、まだここにんでいていいの」
古希祝いの席で「公平に譲る」と言ったとはえない声だった。
私は即座に追いすとは言わなかった。
「今の事やまいについて相談しながら決めましょう」
義母は力が抜けたように背もたれへ寄りかかった。
億円という数字は、彼女の虚栄を膨らませていた。
けれど同に、今の彼女にとって最もなものは、額ではなかった。
このをれた瞬、自分が「黒田の奥様」ではなくなる。
その恐怖こそが、彼女を縛りつけていたのだ。