"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第7話
義弟は半からっていた
「半?」
わず聞き返すと、公平はく頷いた。
「母さんから突然、『あのは将来あなたにあげるから』って言われました。最初は何のことか分からなくて。だから俺、『あれは彩さんのだろ。勝なこと言うな』ってはっきり言ったんです」
「お義母さんは?」
「りました。ものすごい勢いで」
公平によれば、義母は「もんでいるんだから、もう黒田のと同じ」「彩さんだって自分のだとってめと言った」と反論したという。公平が何度否定しても聞き入れず、最には「あなたは何も分かっていない」と話を切った。
その、を譲る話はなくなった。
だから公平は、母親も静になったのだとい込んでいたらしい。
「古希祝いでまさか本当に言うとはわなかった。しかも親戚全員ので。あの瞬、俺、が真っになりました」
「でも、どうして半に急にそんな話になったんでしょう」
私の問いに、公平はし迷った。
「そのし、俺から母さんに引っ越しを提案したんです」
義母は以から膝を痛めていた。私のはの建物で、階へがる階段も急である。庭も広く、歳になる義母がで管理するには負担がきい。
そこで公平は、自宅くにあるエレベーター付きのマンションを借りてはどうかと提案したという。
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病院もスーパーもく、何かあれば公平自もすぐ駆けつけられる。
ところが義母は激しく拒絶した。
「絶対に嫌だって。それで俺が『どうしてそこまで嫌なんだ』って聞いたら、母さん、こう言ったんです」
公平は苦しそうに唇を噛んだ。
「『私があのをたら、もう黒田じゃなくなるでしょう』って」
私は言葉を失った。
む所を失うのが怖いのではない。
「黒田ではなくなる」。
その言葉のが、ゆっくりと胸へ沈んでいった。
、事業に失敗した義父母は、自宅も財産も失った。親戚の集まりでは肩が狭くなり、特にプライドのかった義母は急に数が減っていた。
それが私の広いへ移ってから変わった。
親戚を招き、法事をき、庭を褒められ、「黒田の本」と呼ばれる。そのうち、借りているが、失った自分のの代用品になっていったのだ。
「母さんが守りたいのは、む所だけじゃないんです」
公平はめたコーヒーを見つめた。
「『黒田の奥様』みたいに見られるを守りたいんだといます」
私は初めて、義母の執着が本の線につながるのをじた。
それでもつだけ疑問が残った。
「でも、それならどうして公平さんへ譲ろうとしたんでしょう。公平さんの名義になったら、お義母さんのではなくなるでしょう?」
公平は顔をげた。
「俺も最初はそういました。でも、で分かったんです」
彼はスマートフォンを取りし、画面を操作した。
「半、俺がを受け取らないって言った、母さんからメッセージが来ました」
画面にはい文章が残っていた。
《あなたが受け取ってくれれば、私はしてあそこに最までめるのよ》
私は何度も読み返した。
公平からの返信も残っていた。
《母さん、俺はのを受け取れない》
それを見た瞬、ようやく全てを理解した。
義母は、自分のではないことをっていた。
っていたからこそ、怖かったのだ。