"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第3話
名が残っていた類
午、私たちは以から仕事で世話になっている弁護士の事務所を訪れた。事を聞いた弁護士は、な評価をせず、まず持参した類を枚ずつ机へ並べていった。最初に確認したのは現の産登記だった。
「所者は黒田彩さん単独です。から名義変更はありません」
机に置かれた登記事項証には、私の名がはっきり記載されている。義父の名も義母の名も、公平の名もない。抵当権もなく、誰かに持分を与えた記録もなかった。
次に弁護士がいたのは、、義父母が移りむ際に作成しただった。当、私は族同士でげさな契約まで必ないとっていたが、父が「財産の話は内ほど曖昧にするな」と言っていたため、最限の確認だけは面に残していた。
内容は単純だった。
建物の所権は私にあること。義父母に無償で居を認めること。そして第者への譲渡や規模な改変については、所者である私と協議すること。
「父さんも母さんも署名している」
孝志が掠れた声で言った。
「そうね」
さらに、義母の希望で台所をきく改修した際の確認もあった。そこには「所者・黒田彩の承諾を得て改修事をう」と記され、そのには義母自の署名が残されている。
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孝志が目を閉じた。
「母さん、ってたんだ」
私は返事をしなかった。
義母が本当に所者だと勘違いしていたのなら、まだ理解できたかもしれない。しかしの段階でも、自分が所者ではないと確に認識していた。それにもかかわらず、親族ので「公平に譲る」と宣言した。
問題は単なるい込みではなかった。
弁護士はのコピーにも目を通した。
「『自分のだとってして暮らしてください』という表現は、確かに広く解釈される余はあります。ただ、この文章だけで産を贈与したことになるわけではありませんし、の類との関係を見ても、所権を移すがあったとは読みにくいでしょう」
私は初めて肩の力を抜いた。
ただし、弁護士はすぐに注も付け加えた。
「方で、無償でんでいるという活実態は別です。に『ていって』とめるのではなく、これまでの内容と今の居を含めて理した方がいいでしょう」
「すぐ追いすつもりはありません」
私が答えると、孝志がそうに私を見た。
「私がっているのは、んでいることじゃない。私のものを自分のものとして扱い、に譲ると決めたことです」
弁護士は静かに頷いた。
帰り、孝志は何度も言葉を探した末、「昨、みんなので言ってよかったのかな」
と呟いた。
私はを止めた。
「何を?」
「父さんと母さんがを失ったことまで、親戚ので言う必があったのかって……」
その瞬、私は夫のにまだ残っているものを理解した。
母親の体面を守りたい気持ちだ。
「それはあなたの族の歴史でしょう。でも、その歴史を隠すために私の財産を差しさないで」
孝志は何も言えなかった。
「お義母さんの見栄を守るために、私が欲な嫁になる必はないの」
しばらくして、彼はさく「ごめん」と言った。
だが私には分かっていた。
謝罪だけではは戻らない。
必なのは、夫自がこれまで曖昧にしてきた事実を、自分ので元へ戻すことだった。