"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第1話
古希祝いで義母が譲った「私の」
「今、私がんでいるあの――公平に譲ります」
義母の文子がそう言った瞬、い親族が集まっていた宴会から、箸の触れう音まで消えた。歳の古希を祝う席で、つい先ほどまで皆が笑っていたのに、いテーブルの央に座る義母だけが満そうに微笑んでいる。私はその言葉を聞いたまま、にしていた湯呑みを静かに置いた。
公平というのは、夫・孝志の弟である。しれた席に座っていた公平本は、祝福されるどころか顔から血の気を失い、信じられないものを見るように母親を見つめていた。それでも義母は気づかないのか、あるいは気づいていて無したのか、「男にはちゃんとがあるでしょう。これからは公平の方が必になるんだから」と胸を張った。
私たちが結婚して。そのうち、義母がみ続けてきたそのは、義母のものではない。
も建物も、最初から最まで私、黒田彩の名義だった。
、義父が経営していたさな会社が倒れ、借入の理で自宅まで放さなければならなくなった。ちょうど私は独代に購入していたを仕事の都でほとんど使っておらず、がむ所まで失うのはあまりに気の毒だとい、無償で使ってもらうことにしたのだ。
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当の義父母は何度もをげ、「ほどで必ず自分たちの暮らしをて直す」と言っていた。
ところががになり、がになった。義父がくなった頃から、義母は親戚ので「あの」「うちの庭」「黒田の本」という言い方をするようになった。私はそのたびに引っかかりを覚えたが、夫から「父さんをくして寂しいんだ。言わせておけばいい」と言われ、わざわざを壊すほどのことでもないと黙ってきた。
その沈黙が、の今、最悪の形で返ってきたのだ。
「まあ、いいじゃない。公平ちゃんもまだ自分のを持っていないんでしょう」
伯母のがそう言うと、別の親族も「文子さんがずっと守ってきたなんだから、そういう決め方もあるわよね」と頷いた。私はその瞬、義母がどれほどいをかけて、周囲に「自分の」だとわせてきたのかを初めて理解した。
そして私がをこうとした、そのだった。
「母さん」
隣に座っていた孝志がちがった。いつも族の揉め事になると声をさくし、母親にく言えなかった夫が、驚くほどい声をした。
義母が笑顔のまま息子を見げる。
「何よ」
「あのは、度だって母さんの財産だったことはない」
宴会が、もう度凍りついた。
孝志は親族を見回し、逃げることなく続けた。
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「、父さんと母さんがむ所を失った、彩が自分のをただで使わせてくれたんだ。も建物も、所者は最初から今までずっと彩だ。母さんには、誰かに譲る権利なんてない」
「孝志!」
義母が鋭く名を呼んだが、夫は座らなかった。
公平も勢いよくちがった。
「俺も頼んでないからな」
「公平まで何を言ってるの」
「回もをくれなんて言ってない。母さんが勝に決めただけだろ」
義母の顔から笑みが消えた。だが次の瞬、彼女は鞄をき、から折り畳まれた枚のコピーを取りした。
「だったら、これは何なのよ」
テーブルへ置かれたを見て、私は息を止めた。
、私自が義父母に渡しただった。
そこには確かに、私の字でこうかれていた。
「このは、自分のだとってして暮らしてください」
義母は親族全員に見せつけるようにを持ちげた。
「彩さん。あなた、自分でいたわよね」
私はそのから目をそらさなかった。
「はい。私がきました」
その瞬、今度は親族たちの線が斉に私へ向いた。