"昭和19年、三十二人が夕飯を拒んだ理由" 第16話
残った半俵
の初め、柳瀬の倉で保管されていた炭が寺へ運ばれた。荷のの俵を見た正雄は、米でないことにし落胆したが、しのは々とをげた。炊事のを絶やさずに済むことは、何より事なことだった。の朝、釜の湯気がちるのを見ながら、正雄は米だけが卓を支えているのではないとじた。
藤岡は続いて、米を炭と交換するの量を確かめていた。その結果、寺から作業所へ回された俵のうち半俵ほどは、実際には使われずに柳瀬の別倉へ移されていたことが分かった。帳面では町の炊きしに使ったと処理されていたが、そこへ送った記録はしなかった。柳瀬は初め、荷がりなかったので送るつもりだったと説した。
しかし柳瀬の妻が、いがけない話をした。倉の米は末に別の商へ引き渡す約束になっており、代に当たる物資も部受け取っていたという。妻は、それが町の正式な取引だとっていた。柳瀬は「の者に分かることではない」と言ったが、藤岡は品物の入りと代に当たる物資を調べ始めた。
正雄がったのは、ここまでだった。の取引は難しく、誰が何を持っていったのか聞いても、すぐには分からない。それでも、半俵の米がどこにも使われず、別の商売のために残されていたという事実だけは、許せないとった。
広告
郁夫が芋の皮をかじろうとしたあのをいしたからだ。
「お米が見つかったなら、すぐ配ってくれるの?」。節子が尋ねると、井は困った顔をした。「どこから来た米で、誰の分として配されたか確かめなければいけない。今すぐ寺の物だと言い切ることはできない」。勇吉は腹をてた。「帳面には寺の米だっていてあるだろう」。井は頷いた。「だからこそ、きちんと戻してもらうために調べるんだ」。
数、作業所のも同じ半俵についてった。たちには寺から来た俵のうち俵半しか届いておらず、残りが自分たちの事に使われなかったことにっていた。正雄は最初、寺の分なのにとったが、もまた帳面のの約束を信じて働いていたのだ。玄は「半俵をどう分けるかは、必なたちで話しって決めなさい」と提案した。
そこで寺と作業所からそれぞれが集まり、町の担当者を交えて話しうことになった。正雄たちは会議には加わらず、事の記録だけを渡した。会議の、正雄は節子へ「半俵全部を寺へ戻してほしい」と本音を話した。節子は「私もそうう。でもさんのの子も腹がすいてる」と言った。正雄は悔しくて、靴のつま先でを蹴った。
話しいの結果、確認できた米は適切な管理のもとで寺と作業所の炊事に分けて使うことになり、りない分については町が追加の配を検討するとされた。
納得できないもかった。の夫は、自分たちの労働を軽く見られたとったし、寺の職は子どもの分を元通りにすることをく求めた。誰も完全に満しない決定だった。
だが翌朝、寺の釜には久しぶりにしい麦飯が炊かれた。しのはずつ同じ量を盛りつけ、最にたかと自分の分もさな椀に取り分けた。正雄はたかに「今は根だけじゃないね」と言った。たかは照れくさそうに笑った。誰もが分にべられたわけではない。それでも、誰の椀が空なのかを隠さなくなったことが、正雄にはきかった。