みかん小説
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"空の米びつと一合の嘘" 第22話

また朝が来る

昭の初、フミはさな修理の板を掲げた。《 繕い承ります》。米のほどは集まらなかったが、傷んだ籠を持つ老や、鍋の柄を直したい母親が訪ねてきた。フミは値段を先に説し、終わった仕事は本の目ので確かめてもらった。客が「このくらいでええ」と言っても、決めた額よりく受け取ることはしなかった。

勇は港の数え方を覚え、受入れと引渡しの数字を別々にくようになった。毎、荷とともに働くの顔を見ているうちに、数字の向こうに暮らしがあることをよりはっきりじた。ある、運送伝票と荷台の数がわなかった。運転は「あとで直しとく」と笑ったが、勇は「今、もう度数えましょう」と答えた。はかかった。しかし積み直してみると、袋がつ別のに紛れていた。そので確かめたから、誰も疑われずに済んだ。

千枝のでは、が所のの配達を伝うようになった。初めて得た遣いで、妹へさな鉛を買ったという。千枝はその話をフミにすると、「うちの弘も、しきなったら働く言うてます」と笑った。はほんのい、子どもの話をした。以のように親しい柄へ戻ったわけではない。米の分については、まだ帳面を見ながら話さなければならないこともある。

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だが仕事のに言葉を交わすことはできるようになった。

フミはに度、受者への返済記録を勇に見てもらった。澄もそろばんを習い、数字がわないと母へ慮なく指摘した。ある、計が銭だけくなったことがある。「らんのと違う。いんやからええやろ」と弘が言うと、澄は首を振った。「くても違うもんは違う」。フミはその言葉を聞き、笑いながら帳面をき直した。誰かがりないと声をげたら、そので確かめる。それがのしい決まりになった。

梅のれ、勇は母と緒に、古い米の板を洗った。使う予定はないが、義助が父から受け継いだものだから、捨てるには忍びなかった。の隙にたまった埃を拭くと、昔の文字がしるくなった。フミは「お父ちゃんが見たら、何て言うやろ」と呟いた。勇は「分からん」と答えた。「せやけど、くなったの名まで借りて、今のことを正しい言うてもらうのはやめよう」。フミはうなずいた。

夕方、千枝がへ来た。持っていたのは、以修理した布袋だった。「この袋、よう使えるようになりました」。フミはを止めて礼を言った。千枝は財布から代をし、袋へ入れた品を見せた。根と芋だった。「今は米やないんです」。はわず笑った。戸では、子どもたちが遊ぶ声がしていた。

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をる荷の音も、くのの呼び声も、昔と同じように聞こえてくる。

を閉める頃、フミは米びつの蓋をけた。底には族の分ほどの米が残っていた。決してくはない。だが、誰かにらせず抜いた米でも、帳面だけにする米でもなかった。今の配で受け取り、目ので量り、自分で確かめた米だった。フミは蓋を閉じ、の朝までそのまま置いた。

「お母ちゃん、ご飯は?」と弘が台所から呼んだ。フミは「今炊くよ」と答え、を起こした。米はあの頃よりしは入りやすくなったものの、暮らしが急に豊かになったわけではない。飢えの記憶も、嘘の記録も、返していない分も残っている。それでも今夜は、誰がどれだけべるかを族で相談できる。フミは鍋の加減を見て、子どもたちを呼んだ。

「今は、ちゃんとで量ろう」

台所に集まった族は、米をひとつの椀へ移した。弘がしくすくうと、澄が笑いながら止めた。勇がもう度量り、フミはそれを見守った。ささやかな夕飯の支度だった。誰にも拍されず、派な言葉も残らない。けれどフミは、あの空っぽの米びつをにち尽くした朝から、ようやくここまで歩いてきたのだとった。

※本作は昭代の糧事と配制度を背景にした創作です。

登する物、商、事件はすべて架空のものです。

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