"亡霊の専属運転手" 第8話
鉄扉の向こうの
ドガァァァン!!
鼓膜を破るような凄まじい轟音が響き、施錠されていたはずの防音扉が、側から巨な油圧カッターによって引にこじけられた。
蝶番が吹きび、な扉が内側へと倒れ込む。煙がち込める、濃紺のタクティカルギアにを包んだ警察の特殊急襲部隊(SAT)と、ホールディングスの専属警備隊が、涛の勢いで崩れ込んできた。
「くな! 警察だ!」
「銃を捨てろ!」
数本のサブマシンガンの銃が斉に向けられる。
しかし、突入した隊員たちが目にしたのは、予していた血みどろの銃撃戦ではなかった。
の屈な武装傭兵が、すでに全の急所を確に破壊され、残らず気絶してに転がっている異様な景。そして、部の奥で、無傷の鷹司会を背に庇うように、凛としてつの女性の姿だった。
「……な、なんだこれは……」
SATの隊がわず呆然と呟いた。
その混乱の隙を突いて、をっていた剛田が、泣き叫びながら隊の元へとすがりついた。
「け、警察か! 助かった! その女だ! その女を逮捕しろ!」
剛田はから泡をばし、美央を指差して喚き散らした。
「そいつがテロリストだ! 候補者たちを皆殺しにして、会を質に取ろうとしたんだ! 俺は副社の剛田だぞ! おたちの料を税で払っている特権階級のだ! くその女に錠をかけろ!」
広告
最まで権力にしがみつき、真実をねじ曲げようとする見苦しい悪あがき。
しかし、SATの隊はえ切った線で剛田を見ろし、そのを無造作に払い落とした。
「邪魔だ、退きなさい」
「な……なに!?」
隊は剛田を完全に無し、美央と鷹司会のへと直すると、直の姿勢で々と敬礼を捧げた。
「鷹司会、ご無事で何よりです。……そして、神代美央殿」
隊は美央に向き直り、敬を込めて言った。
「部サーバーへ送信された音声データ、および防犯カメラのログ復旧データ、すべて警庁本部で確認いたしました。単独でのテロリスト制圧、ならびに会の辺警護、誠に見事な職務遂です。より謝申しげます」
「おたち、狂っているのか!?」
剛田がちがり、血った目で叫んだ。
「俺は副社だぞ! 次期会だ! そんな名もない娘の言うことを信じるのか!」
その狂乱の号を、隊の徹な宣告が叩き潰した。
「剛田副社。あなたの自音声、および暴力団関係者を通じた傭兵の配ルート、送記録のすべてが裏付けられました。警庁捜査課より、あなたに対する殺予備、凶器準備集、ならびに組織犯罪処罰法違反の容疑で、緊急逮捕の令状がています」
ガチャリ。
たい鋼鉄の錠が、剛田の目のでを反射した。
「逮捕する」
広告
「い、嫌だ……嫌だあああっ! 俺は選ばれたなんだ! こんなたい鉄の輪をはめられる筋いはないんだ!」
剛田が暴れ狂うが、屈な捜査官名によって瞬に腕を捻りげられ、背に組み伏せられた。
カチャリ、と無質な属音が鳴り響き、男の両首が背で固く拘束される。
「せ! 俺の会社だ! 俺の富だ! 俺のタワーマンションが……!」
に顔を押し付けられ、涙ととにまみれながら叫ぶ剛田の姿には、かつて美央を「女の来る所ではない」と見していた面は欠片も残っていなかった。
「連しろ。倒れている実犯たちも全員、柄を確保しろ!」
隊の鋭い号令のもと、の暗殺者たちと、完全に発狂した剛田が、次々と部から引きずりされていった。
ざかる剛田の惨めな叫び声。
やがてエレベーターの扉が閉まる鈍い音とともに、このフロアを支配していたすべての悪あるノイズが、完全に消輪した。
破壊された特別面接に、再び清らかな静寂が戻ってきた。
窓のを見れば、の澄み渡る青空の、どこまでも広がる京の並みが、午の柔らかな陽を浴びて輝いていた。