"消された十六番目の席" 第19話
沢の解けと、息子の訪問
の終わりに届いた野さんからの査定額は、私の像を回るものだった。 ハウスメーカー施の入れの良さと、昨の最リフォームが功を奏し、隣の相よりも値での売りしが決まった。 と、私は敏さんのの階を借りし、そこから運送会社の経理の仕事へ通った。 輔と麻美のいるへは、度もを踏み入れなかった。
に入ると、野さんの案内で、週末ごとに購入希望者の内覧が入るようになった。 輔と麻美は、内覧のたびに部の隅々まで磨きげ、息を潜めて待していたという。 かつて私の具を粗ゴミにした麻美が、今度は買いのために、膝をついてを雑巾掛けしていたそうだ。
そしての末。 私はあまり勤めげた運送会社を、円満に退職した。 最終、社の奥さんが真っ赤な薔薇の束を抱えて見送ってくれた。 「田さん、本当にお疲れ様でした。あなたがいなくなると寂しくなるけれど、しいをい切り楽しんでね!」
の旬、輔と麻美は、輔の会社にい賃貸マンションへと引っ越していった。 賃万千円、築の2LDK。 久志さんからのによれば、麻美は駅のスーパーのレジ打ちのパートを始め、毎の計簿を円単位でつけながら、慎ましく暮らしているという。
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『麻美は今になって、かず子さんがあのでどれほどの荷を背負い、どれほど自分たちを支えてくれていたのか、に染みて理解したようです』 の結びには、そう記されていた。
の型連休。 私は沢の姉ので、庭の緑を眺めながら穏やかな々を過ごしていた。 そこへ、本の連絡を入れたで、輔がで幹線に乗ってやってきた。
には、い経に包まれた、吉川の穴子の折詰がげられていた。 輔はひどく痩せていたが、その顔つきからは、かつての甘ったれた傲さが消え、の男としての引き締まった表を取り戻していた。
で、浅野川の川敷を歩いた。 初の爽やかなが、川面を揺らして吹き抜けていく。 「母さん……」 輔は川の流れを見つめたまま、ぽつりと言った。 「俺……いつから、あのが自分のだなんて勘違いしてたんだろうな。母さんが飯を作ってくれて、洗濯してくれて、掃除してくれるのを……当たりの権利だとい込んでた」
「輔。私も悪かったのよ」 私が微笑むと、輔は驚いたように振り返った。 「何でもやってあげすぎたわ。歳にもなった息子を、の回りのことつできない男に育ててしまったのは、私の過保護のせいでもあったのよ」
輔は困ったように眉をげて笑った。 そして、恐る恐るをいた。
「母さん……また、いつか緒に暮らせないかな?」
「それは、しないわ」 私は迷いなく、きっぱりと首を横に振った。 「あなたは私のたったの息子よ。その絆は、ぬまで変わらない。でもね、緒には暮らさない。たまにこうして、美しいお寿司でも持って、顔を見せに来てくれれば分よ」
輔はしばらく川面を見つめ、やがてく、静かに頷いた。 「……分かった。母さんが元気で笑っててくれるなら、それが番だよ」
川のせせらぎを聞きながら、私たちはき夫のい話を、が暮れるまで語りった。