"消された十六番目の席" 第5話
置きりの静寂と、暴かれた嘘
親戚同の笑い声と音が、夕の迫る通りへとざかっていく。 玄関のい引き戸が閉まった瞬、築のは、墓のような静寂に包まれた。
リビングに戻ると、そこにはが散らかした惨状がそのまま放置されていた。 座卓のには、み残したジュースのコップとビールの空き缶が散乱し、べ散らかしたおせちの箱の隅で、煮しめの汁が黒く乾きかけている。畳のには、脱ぎ散らかされたスリッパが転がり、枚の座布団が無残に潰れていた。
いつもなら、私はため息をつきながら、すぐにゴミ袋を広げて片付けを始めただろう。 だが、そのの私は、指本かすことができなかった。 輔の酷な台が、の奥で何度も、何度もリフレインしていた。
『母さん、寿司なんていつでもえるし』
いつでも? 夫がくなってからの、仏壇に供える折り詰めを取りにくことしか許されなかった私に、あの息子は「いつでもえる」と言い放ったのだ。 そして、麻美の言葉。 『内だけで楽しみたいので』 『帰ってきたら分の布団を敷いて、子供たちをお呂に入れておいてくださいね』 私を「内」から除しておきながら、女としての労働だけは寸分の狂いもなく求する、そのおぞましい面性。
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(……私、ここで体何をしているんだろう)
台所のパイプ子に腰をろし、の仏壇を見つめた。 遺のの正幸が、しげに私を見つめ返しているようにえた。 の、このの棟げ式のに、柱の真んで両を広げて『ここならみんなが集まれるな!』と誇らしげに笑っていた夫。 夫の言った「みんな」のに、私は最初から最まで入っていたはずだ。 だが、今のこのに、私の居所などどこにもない。
その、エプロンのポケットに入れてあったスマートフォンが、震えた。 画面を見ると、発信元には【吉川】の文字が表示されていた。 夫の親友であり、今夜親戚同が繰りしているはずの、あの老舗寿司の将からだった。
震える指で通話ボタンを押し、に当てた。 「もしもし、吉川の将ですか……? あけましておめでとうございます」 『ああ、かず子さん! おめでとう……いや、そんなことより、あんた具でも悪いのかい!?』 受話器の向こうから聞こえる将の声は、激しい困惑とりに満ちていた。
「え……? 具、ですか? いえ、私はピンピンしていますけれど……」 『じゃあ、なんでに来ないんだ! さっき輔君たちが簾をくぐったから、俺が真っ先に「かず子さんはどうした」って聞いたんだよ。そうしたら、あの嫁の麻美さんが、親戚全員のでこう言ったんだぞ!』
将の言葉が、私の鼓膜を激しく揺さぶった。
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『「お母さんは混みが嫌いで、ででテレビを見ていたいから、今回はパスするって言われました」ってな!』
息が止まった。 の芯が、カーッと音をててくなった。 混みが嫌い? ででいたい? そんな戯言、私はまれてこの方、度たりともにしたことなどない。
『輔君も横で黙って頷いてたぞ。……おい、かず子さん。それだけじゃないんだ。俺が今、この話をかけてるのはな……あまりにも胸糞悪いものを見ちまったからなんだよ』
将の声が、く、ドスを利かせた響きへと変わった。
『今の予約、元々は先のに、輔君の名義で【名】で入ってたんだ。つまり、最初からあんたの席もちゃんと用されてたんだよ。……だがな、暮れのの朝、麻美さんから直々に変更の話が入ったんだ』
私の臓が、鐘のように打ち鳴らされる。
『あいつ、話で何て言ったとう? 「義母が急にきたくないと言いしたので、名に減らしてください。あ、義母の分の特穴子も、キャンセルで結構です」――そう言って、あんたの席を無理やり削り取ったんだよ!!』